研究課題
本研究は胚形成時における器官分化の分子機構に関し、特に分化を誘導するシグナル伝達に着目して研究を行った。研究代表者はイネの胚発生致死突然変異体を用いた解析から、小分子RNAによるシグナリングとMAPキナーゼによるシグナリングがイネの胚形成の過程で器官分化に重要な働きをすることをすでに明らかにしている。本研究ではこれらのシグナリング経路の詳細を明らかにすることを目指した。具体的には、胚形成における器官分化に機能するさらなる因子の同定、分化を誘導するシグナルとしての小分子RNAの特性解析、胚における器官分化に機能するMAPキナーゼを介した情報伝達経路の解析を行う。まず、小分子RNAを介した茎頂分裂組織構築に機能するさらなる因子の同定については、小分子RNAの標的であるETT/ARF遺伝子の機能解析を中心に取り組んだ。ETTIN遺伝子ファミリーのRNAi系統や過剰発現系統を作出しその表現型を観察した。その結果、イネに4種あるETTIN遺伝子に機能分化が見られる事が明らかになった。次に、胚における器官分化に機能するMAPキナーゼを介した情報伝達経路の解析に関しては、胚形成初期の分裂様式に着目して表現系の解析系の立ち上げを昨年度に引き続き行った。その結果、共焦点レーザー蛍光顕微鏡により受精後24時間以内の細胞分裂様式を効率よく観察する実験系を立ち上げることに成功した。今後は、この実験系を用いて、器官分化に異常のある胚発生突然変異体の受精直後の細胞分裂様式を観察する。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目標である器官分化を制御するシグナル伝達経路の解明に関し、MAPKカスケードが初期胚の細胞分裂様式を制御するとの仮説にもとづき細胞分裂の観察系の立ち上げに成功した。この解析系を用いれば今後変異体の解析を残された研究機関で効率よく進める事ができるから。
本研究の目標である器官分化を制御するシグナル伝達経路の解明に関し、MAPKカスケードが初期胚の細胞分裂様式を制御するとの仮説にもとづき細胞分裂の観察系の立ち上げに成功した。今後はこの実験系を用いて器官分化に異常のある突然変異体の観察を重点的に行う。また、胚における器官分化を制御する小分子RNAについても、その標的であるETTIN遺伝子ファミリーの機能解析とその機能分担を重点的に解析する。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
The Plant Cell
巻: 23 ページ: 4368-4381
Nature Communications
巻: 2 ページ: 278
巻: 23 ページ: 3276-3287