研究概要 |
銀坊主を約1万2千個体栽培し、全個体からDNAを抽出するとともに自殖種子を採種した(平成22年)。本年度はmPing転移による遺伝子の機能改変およびストレス応答性改変遺伝子の網羅的解析を目的とし、次世代シーケンサーによりmPing挿入座の同定をおこない、遺伝子内部およびプロモーター領域(上流500bp)に挿入を有する遺伝子をmPing挿入遺伝子として選抜した。銀坊主11,520個体(G12000集団)のDNAを供試しmPingの内部に設計したプライマーおよびランダムプライマーで増幅したサンプルを用いてmPing隣接領域をGAIIx(illumina)でシーケンスした。PCRの際に960個体/バルクごとに異なるindexを割り当て、同定されたmPing挿入が由来するバルクを判別可能にした。 index別にリードを分類した全242,844,819リードをイネゲノムにアライメントした結果、230,947,401リードがマッピングされた。サンプル調製のエラー等により、挿入座が実際の挿入位置とズレる可能性があるが、10bp以内に隣接して同定された挿入は、同一座への挿入としてみなした。その結果、全46,926ヶ所のmPing挿入座を同定した。これらのうち最初からあったとみなせる挿入は1,724ヶ所、新規挿入は32,158ヶ所であり、1個体あたり平均2.9ヶ所の新規挿入を検出できた。銀坊主の転移頻度が1世代1個体あたり約10コピーであることから、3割以上の新規挿入を一度に同定できたと考えられる。全46,926ヶ所の挿入座と最近傍遺伝子の関係を解析したところ、8,198ヶ所(約17%)が遺伝子内、8,334ヶ所(約18%)がプロモーター領域への挿入であり、重複を除外すれば遺伝子内およびプロモーター領域についてそれぞれ5,354および5,884個のmPing挿入候補遺伝子を同定できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
銀坊主においてmPingの新規挿入が遺伝子の発現制御を頻繁に変更していることを明らかにできたが、同定された新規の挿入座は約3割と推定された。より功利的に挿入座を同定するためには、より多くのリードを読む必要がある。一方、本実験では既存の挿入1,724ヶ所と1個体あたりの新規挿入約10ヶ所、あわせて1,734の挿入を有する個体11,520個のDNAを用いたため、G12000集団中には推定19,975,680コピーのmPingが存在する。今回の全リード数は242,844,819リードであり、1コピーあたり平均12リードと計算される。実際に読まれた各挿入座のリード数は不均一であり、ひとつのindexでのみ検出された挿入座のうち多いものは2,112リードもあった。したがって、効率的な新規挿入座同定のためには、PCRの過程を工夫してリード数のばらつきを抑制したサンプル調製が必要であるが、mPing挿入がゲノムに及ぼす影響の大枠を把握することができた。
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