研究課題/領域番号 |
22380008
|
研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
寺地 徹 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (90202192)
|
研究分担者 |
山岸 博 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (10210345)
黒坂 光 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (90186536)
肥塚 信也 玉川大学, 農学部, 准教授 (30433866)
中村 崇裕 九州大学, 農学研究科, 特任准教授 (10464398)
三宅 恵子 岐阜大学, 男女共同参画推進室, 特任准教授 (40404058)
|
キーワード | ダイコン / 雄性不稔 / 稔性回復遺伝子 / PPR / ミトコンドリア / 次世代シークエンサー |
研究概要 |
本研究は、ダイコンの雄性不稔と稔性回復の分子機構を最新の分子生物学的方法で明らかにするとともに、ミトコンドリアの雄性不稔遺伝子と核の稔性回復遺伝子(Rf遺伝子)の多様性が産み出される原因をDNAの塩基配列レベルで明らかにすることを目的とする。本年度は下記に示す成果を得た。 平成23年4月に熊本県、6月に山形県、平成24年3月に宮崎県の現地調査を行い、雄性不稔を示すハマダイコンを多数採集した。これらの個体からDNAを単離し、PCR法によりミトコンドリアゲノムのタイプを調査したところ、すべてオグラ型と判定され、新規のタイプは発見できなかった。正常型とオグラ型のミトコンドリアゲノムの違いを明らかにするため、打木源助(正常型)及びMS源助(オグラ型)のmtDNAの全塩基配列を次世代シークエンサーにより解読した。その結果、正常型mtDNAは全長244,037bp、オグラ型mtDNAは全長258,426bpの環状DNA分子と考えられること、雄性不稔遺伝子orf138は、両型の分化にともなうmtDNAの大規模な再構成の過程で偶然生じた、新規遺伝子であることがわかった。 ハマダイコン及びアザキダイコンの採集調査を行い、7地域約30個体からRf遺伝子(PPR-B遺伝子)のコード領域を含む全長約3.2kbのDNA断片をクローニングし、得られたDNA配列データから種内変異の量やパタンを解析した。さらにPPR-Bと連鎖するパラログ遺伝子群との比較解析を行った。その結果、各地域集団間の遺伝的な分化は認められず、中立性からの大きな逸脱も検出されなかった。領域全体の塩基多様度(~0.1%)は平均的な植物集団と比べて多少低いものの、コード領域の一部に変異量の増大が認められ、染色体の不等交叉に伴う非相同配列間の遺伝子変換が、PPR-B領域の変異パタンに局所的な影響を及ぼしている可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オグラ型と正常型の2種類についてダイコンミトコンドリアゲノムの構造を初めて決定することができた。また稔性回復遺伝子を含む、核のゲノム領域のDNA塩基配列の分子集団遺伝学的解析から、稔性回復遺伝子の多様性が産み出される機構の一端が明らかとなった。一方、ハマダイコンの集団中に存在すると予測された、新規雄性不稔細胞質を発見すること未だできていない。
|
今後の研究の推進方策 |
代表者、分担者間の役割分担も含めて研究の推進方策に特に問題はない。今年度の調査で得られるデータを加えてこれまでの成果を論文にまとめ公表する。
|