研究概要 |
低温発芽性RILsを用いた遺伝子発現QTL解析を目標として、まず材料となる系統の大規模なDNA配列多型解析を行った。低温発芽性に優れるイネ品種「Arroz da terra」と低温発芽性の劣る品種「いわてっこ」のゲノムDNAを供試し、制限酵素PacIを用いたゲノムタグ解析(RAD-tag解析)を行った。「Arroz da terra」については8,462,936タグ、「いわてっこ」については7,309,743タグが得られた。このタグ数からPacIで切断したほぼ全ての断片の末端配列が得られていると推測できる。両品種の各タグ配列のタグ数(出現頻度)を比較し、どちらかの品種でのみ出現しかつ50タグ以上であるタグを品種特異的タグとして選別した結果、いわてっこ特異的タグとして2,684種類、Arroz da Terra特異的タグとして3,057種類が見出された。いわてっこ特異的タグについてはリファレンスゲノム(品種「日本晴」)にマッピングを試みたところ、各染色体上に分布することが示された。つづいて両品種の交雑後代であるRILsの96系統の各々からゲノムDNAを抽出し、同様に制限酵素PacIを用いたゲノムタグ解析(RAD-tag解析)を行った。抽出したタグDNA断片はイルミナ社Hiseq2000シークエンサーで解析し、平均1,317,151タグ/系統のタグを解析した。これら96系統のRILsにおける上記のいわてっこ及びArroz da Terra特異的タグの出現の有無によって遺伝子型タイピングを行うことができた。いわてっこ及びArroz da Terra特異的タグのうち両者で1ないし2塩基違いのタグを同一遺伝子座由来の対立遺伝子を表す共優性マーカーとして捉え、RIL,s各系統での各タグの有無からいわてっこ型、Arroz型、ヘテロ型のタイピングを行ってグラフィカルジェノタイプを作成した。
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