本研究は耐塩性の大きく異なるオオムギ品種を用いて、塩ストレス条件における光合成と乾物生産、子実生産に関わる生理機構とその分子機構を解明すること、および、耐塩性に関わる形質の遺伝子座を検出し、その遺伝子座の生理機能を解明することを目的とする。平成24年度は以下の成果が得られた。 (1)まず、Russia 6とH.E.S.4の組換え自殖系統群(RILs)を用い、第1葉展開完了時から収穫期までNaClを含まない水耕液(0mM NaCl処理)、あるいは100mMのNaClを含む水耕液(100mM NaCl処理)で生育させ、高塩類濃度条件における稔実歩合維持に関わる量的形質遺伝子座(QTL)を推定した。 1)100mM NaCl処理によって穂重および稔実小穂重はH.E.S.4はほとんど低下しなかったが、Russia 6はそれぞれ83%,56%と大きく減少した。小穂数,稔実1小穂重はいずれの品種も100mM NaCl処理によってもほとんど低下しなかった。100mM NaCl処理の稔実歩合はH.E.S.4では89%であったが、Russia 6では68%に低下した。以上の結果から、100mM NaClによる両品種の穂重と稔実小穂重の相違は稔実歩合の違いによって生じていることが分かった。 RILsの稔実歩合の平均値は両親の間にあった。 2)QTL解析の結果、第2染色体上のG5近傍,第6染色体上のU187近傍、第7染色体上のU013近傍にH.E.S.4が稔実歩合を高めるQTLが、第4染色体上のU264近傍にRussia 6が稔実歩合を高めるQTLが推定された。 (2)耐塩性の大きく異なる品種OUE812とOUC613の組換え近交系の世代促進をF6世代まで進め、遺伝解析集団を作成した。
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