研究概要 |
ダイズの最大の生産変動要因は水環境変動である。本研究は,ダイズの生育・収量を気象から予測する既存モデルに、水田転換畑圃場における水収支動態ならびに過湿ストレスに対する生育反応を考慮するモジュールを新たに組み込み、日本の栽培環境に即した生育予測モデルを開発するものである.平成22年度は下記のような研究を実施した 1. 主要品種の発育特性のパラメタリゼーション 開花期および成熟期を発育速度(DVR)の積算値として表し,DVRを温度および日長の非線形関数で算出する発育モデル(堀江と中川1990)をダイズに適用し,品種エンレイ,タチナガハ,サチユタカおよびフクユタカについてパラメータを試算した 2. 過剰水分などが生育諸過程に及ぼす影響のモデル化 滋賀県農業技術振興センター研究水田に,地下水制御システムを設置した。南北40m×東西80mの圃場を南北方向に5分割し(1圃区8m×80m),それぞれの地下水位を独立に制御化能にした.本システムは次年度以降の実験にする予定である.他方,京都大学において,過湿ストレスが葉面積展開影響について,品種エンレイを用いた予備的なポット実験および圃場実験を実施した.出芽後開花までの期間に約2週間の過湿条件を与える場合の収量低下は,主に乾物生産量の低下に,乾物生産量の低下はさらに(1)葉面積と受光率,(2)日射利用効率の低下に起因することをみとめた.また,中央農業研究センターにおいて,湛水条件が窒素固定活性の低下とその後の回復に及ぼす影響についてポット実験を実施した 3. 転換畑における水収支モジュールの開発 圃場の有効土壌水分の動態を,気象から再現するモデルの転換畑圃場への適用性について検討した
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