研究課題/領域番号 |
22380016
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
加藤 尚 香川大学, 農学部, 教授 (50222196)
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キーワード | アレロパシー / イネ / モミラクトン / 作用機構 / 雑草抑制 / シロイヌナズナ / 成長抑制 / タンパク質 |
研究概要 |
1.イネ根圏土壌におけるモミラクトンの濃度測定方法の確立:本研究により確立した方法で,イネ根圏土壌におけるモミラクトンAとモミラクトンBの濃度測定を昨年度に続き行った.その結果,イネは,モミラクトンAとモミラクトンBを水田土壌に連続的に放出していることが明らかになった.また,イネ生体内では モミラクトンAの濃度がBより高いが,放出量ではモミラクトンBがモミラクトンAより多かった.イネはモミラクトンを選択的に放出していることが明らかになった. 2.モミラクトンの雑草抑制(アレロパシー)の作用機構に関する研究 (1) 変異体にモミラクトンを与えモミラクトンの作用点を明らかにする:昨年度に引き続いて,数種のジベレリン変異体にモミラクトンを与えた.その結果,野生型と作用に差が出ないことが再確認された.そこで,シロイヌナズナSALKライン(約1万の変異株)に,モミラクトンを与え,感受株,非感受株を選抜に関する研究を開始した. (2)モミラクトンにより誘導されるタンパク質を明らかにする:モミラクトン投与後90分後にシロイヌナズナのタンパク質を二次元電気泳動法で分析し,タンパク質をトフマスにより同定した.その結果,モミラクトンB投与区で,トリオース-リン酸イソメラーゼ (解糖系の酵素)を含む3種類のタンパク質が減少し,グリセロアルデヒド3リン酸脱水素酵素 (解糖系の酵素)を含む4種類のタンパク質が増加していた.180分後では,モミラクトンB投与区でトリオース-リン酸イソメラーゼ,フルクトースビスリン酸アルドラーゼI (解糖系の酵素)を含む4種類のタンパク質が減少し,グルタチオンS-転移酵素1(活性酸素除去に関わる酵素)を含む4種類のタンパク質が増加していた.この結果から,モミラクトンBは解糖系や活性酸素除去に関するタンパク質に影響を与えることでアレロパシー作用を発現している可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.イネ根圏土壌におけるモミラクトンの濃度測定方法の確立し測定を行うことができた.本研究により確立した方法で,イネ根圏土壌におけるモミラクトンAとモミラクトンBの濃度測定を昨年度に続き行うことができた.当初の予定通り進んでいる. 2.モミラクトンの雑草抑制(アレロパシー)の作用機構に関する研究は,(1)について当初の仮説通りではなかった. (1) 当初,モミラクトンの作用はジベレリンの生合成や感受性に影響を与えていると仮定していた.そこで,シロイヌナズナのジベレリン生合成系路の変異体やジベレリン感受性変異体にモミラクトンを与えてその影響を検証した.しかし,モミラクトンの影響はこれらの野生型と変異体で作用に差が出ないことが確認された.そこで,シロイヌナズナSALKライン(約1万の変異株)に,モミラクトンを与え,感受株,非感受株を選抜に関する研究を開始した. (2)モミラクトンにより誘導されるタンパク質を明らかにすることができた.モミラクトン投与後90分後にシロイヌナズナのタンパク質を二次元電気泳動法で分析し,タンパク質をトフマスにより同定は予定通り進行している.
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今後の研究の推進方策 |
1.イネ根圏土壌におけるモミラクトンの濃度測定については引き続き行う. 2.モミラクトンの雑草抑制(アレロパシー)の作用機構に関する研究 (1) 変異体にモミラクトンを与えモミラクトンの作用点を明らかにする:昨年度に引き続いて,数種のジベレリン変異体にモミラクトンを与えた.その結果,野生型と作用に差が出ないことが再確認された.そこで,シロイヌナズナSALKライン(約1万の変異株)に,モミラクトンを与え,感受株,非感受株を選抜に関する研究を行う. (2)モミラクトンにより誘導されるタンパク質を明らかにする:引き続き,モミラクトン投与後,一定時間後にシロイヌナズナのタンパク質を二次元電気泳動法で分析し,タンパク質をトフマスにより同定していく.
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