研究分担者 |
執行 正義 山口大学, 農学部, 教授 (40314827)
寺井 弘文 神戸大学, 農学研究科, 教授 (30110802)
鈴木 康生 神戸大学, 農学研究科, 助教 (30335426)
今堀 義洋 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (40254437)
石丸 恵 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (90326281)
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研究概要 |
本研究の目的は,(1)各種ストレス処理による園芸作物の生理反応について,生理・生化学・分子生物学的側面から追究し,(2)得られた結果に基づき望ましい収穫後処理方法を確立することである。今年度は,(1)高温処理(ブドウ),(2)エタノール処理(トマト),(3)UV-B処理(バナナ,ブロッコリー),(4)過酸化水素処理(ピーマン)について実施した。 1.高温処理: 1)野生ブドウと栽培ブドウについて,アントシアニン生合成系遺伝子群と転写因子の発現をリアルタイムPCRで解析した。その結果,遺伝子の発現量の差はあったが,すべての生合成系遺伝子は発現しており大きな違いは見られなかった。栽培品種であるキャンベルアーリーのアントシアニン組成の変化は,最終段階の糖付加酵素,もしくは,メチル化酵素によるものであると考えられた。2.エタノール処理: 1)ブレーカーステージのトマト(マイクロトム)にエタノールパッドによるエタノールの連続処理を行い,追熟抑制効果とその際のエチレン生成を調べ,エチレン生合成酵素の遺伝子発現プロファイルを作成した。3.UV-B処理: 1)バナナ(緑熟-エチレン無処理,成熟-エチレン処理)のUV-B処理による低温貯蔵(4℃)中の障害抑制について調べた。成熟果ではほとんど処理効果が見られなかったが,緑熟果ではUV-B短時間処理(1分間果実両面処理,照射量0.45kJ/m2)で低温障害抑制効果が認められた。果皮の総過酸化物,アスコルビン酸およびドーパミン含量の変化から,活性酸素種の生成が抗酸化システムを活性化し,低温障害の抑制につながるものと推察された。2)ブロッコリーのUV-B処理による遺伝子発現を網羅的に解析し,クロロフィル分解を含め老化に関連する遺伝子を調べた。4.過酸化水素処理: 1)ピーマンを1%過酸化水素溶液に通した79%窒素と21%酸素の混合ガスをそれぞれ通気させて,20℃下で3日間処理を行った。過酸化水素含量はコントロール(0%)と1%処理との間に差はなく,経時的に減少した。アスコルビン含量は,コントロールに比べ1%で増加した。アスコルビン酸ペルオキシダーゼおよびモノデヒドロアスコルビン酸還元酵素の活性は,1%処理で増加が見られた。しかし,カタラーゼ,酸化型アスコルビン酸還元酵素およびグルタチオン還元酵素の活性は差がなかった。以上の結果から,過酸化水素処理によりアスコルビン酸-グルタチオンサイクルが活性化されることがわかった。 さらに,本年度はこれまで得られた結果を中心とし,海外(タイ)からも研究者を招き,公開シンポジウム「園芸作物の物理的・化学的処理による品質改善および貯蔵中の品質保持効果」を神戸大学にて開催した(2012年3月17日,出席者54名)。
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