病害抵抗性を制御する抵抗性遺伝子が単離されているが、その遺伝子がコードするRタンパク質の機能と抵抗性の分子機構は未だに明らかではない。研究代表者が独自に単離・研究してきたRCY1/RPP8抵抗性遺伝子座は、Coiled-coil(CC)-nucleotide-binding site(NB)-eucine-rich repeat(LRR)ドメインをもつRタンパク質をコードしており、その対立遺伝子がウイルスと卵菌類の抵抗性遺伝子(RCY1とRPP8)に分化している。本年度は、キメラRCY1/RPP8遺伝子を構築し、Agroinfiltration法による一過的遺伝子発現法と同遺伝子を導入した形質転換植物を作出し、病原体応答の特異性を決定する機能ドメインの解析を行った。その結果、(1)CMV(Y)接種Nicotiana benthamiana(Nb)葉でRCY1を一過的に発現させると、過敏感反応(HR)抵抗性が誘導されたが、対立遺伝子であるべと病菌抵抗性遺伝子RPP8を同様に発現させてもHR抵抗性は誘導されなかった。(2)HAタグを付加したRCY1(RCY1-HA)とRPP8(RPP8-HA)の間で、CCまたはLRRドメインを相互に交換したキメラを作製し、同様にNb葉で発現させたところ、RCY1のLRRドメインをもつキメラのみがHRを誘導した。したがって、LRRドメインとCMV(Y)が相互作用することにより、防御応答システムが誘導されることが示された。また、(3)RCY1のLRRドメインをもつキメラ遺伝子を発現する形質転換植物は、同様にCMV(Y)抵抗性を示した。さらに、(4)Nb葉における同キメラタンパク質の蓄積について、HAタグ抗体を用いて調べたところ、HR誘導と同タンパク質の自己分解に明瞭な相関が認められた。防御システムの活性化に伴って、抵抗性タンパク質RCY1の自己分解が誘導されることが明らかになった。
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