研究課題/領域番号 |
22380028
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 英樹 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20197164)
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研究分担者 |
安藤 杉尋 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10442831)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ウイルス抵抗性 / キュウリモザイクウイルス / 病害抵抗性遺伝子 / NB-LRRタンパク質 |
研究概要 |
病害抵抗性を制御する抵抗性遺伝子がコードするRタンパク質の機能と抵抗性の分子機構は未だに明らかではない。研究代表者が独自に単離・研究してきたRCY1/RPP8抵抗性遺伝子座は、Coiled-coil (CC)-nucleotide-binding site (NB)- leucine-rich repeat (LRR)ドメインをもつRタンパク質をコードしており、その対立遺伝子がキュウリモザイクウイルス(CMV)とアブラナ科べと病菌(Hpa)の抵抗性遺伝子(RCY1とRPP8)に分化している。本年度は、(1) RCY1とRPP8のLRRドメイン内で部分的にアミノ酸置換を誘導したキメラRCY1/RPP8遺伝子8種類を、Nicotiana benthamiana葉においてアグロインフィルトレーションにより一過的に遺伝子発現させ、CMVの特異的認識と抵抗性誘導に関わる領域について解析を行った。その結果、LRRドメイン内の特定のアミノ酸に基づく局所的な高次構造ではなく、LRRドメインの全体的な高次構造が、CMV認識と抵抗性誘導に関わっていることが明らかになった。(2)次に、抵抗性遺伝子RCY1に対応するCMVの非病原性遺伝子の解析を行った。過去の研究より、CMV(Y)系統の外被タンパク質遺伝子(CP)が、RCY1に対する非病原性遺伝子であることを明らかにしていることから、前年度に作出したキメラRCY1/RPP8形質転換N. benthamiana (RPP8由来CC-NBドメイン+RCY1由来LRRドメイン)において、CMV(Y)のCPと病原性系統であるCMV(B2)のCPの間で作出したキメラCP遺伝子を一過的に発現させ、過敏感細胞死を指標として抵抗性誘導を評価した。その結果、CMV(Y)CPのN末端に特有のヘリックス構造が、非病原性因子としての機能を決定している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RCY1とRPP8のキメラタンパク質の機能解析から、キュウリモザイクウイルス(CMV)に対する認識特異性と抵抗性誘導が、LRRドメインの全体的な構造により決定されていることが明らかになった。一方、CMV(Y)とCMV(B2)のキメラ外被タンパク質の機能解析から、CMV(Y)外被タンパク質のN末端構造が、RCY1による抵抗性誘導に関わっている可能性を見出したことから、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
RCY1とRPP8のキメラタンパク質を発現する植物を用いて、アブラナ科べと病菌(Hpa)に対する抵抗性を制御しているドメインを決定する。さらに、Hpa抵抗性遺伝子RPP8に対応するHpaの非病原性抵抗性遺伝子の単離・同定を行い、RCY1/RPP8遺伝子座が、生物学的に異なる2種類の病原体(CMVとHpa)の抵抗性遺伝子として機能している仕組みを明らかにする。
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