研究概要 |
ピーマン斑点細菌病菌のavrBs3,イネ白葉枯れ病菌のavrXa7, avrXa10等の非病原力遺伝子と、同じavrBs3遺伝子ファミリーに属し互いに90%以上の相同性を示しながら病原性発現に関与するカンキツかいよう病菌(Xanthomonas axonopodis pv.citri, Xac)のpthA遺伝子との間で、また、これらのキメラ遺伝子の間で、非病原性Xac変異株形質転換体を用いたカンキツ葉接種後の病原性、タバコ葉接種後の過敏感反応誘導能、これらの大腸菌内大量発現株の粗抽出液とAvrBs3のBs3プロモーター結合領域(UPA box, upregulated by AvrBs3)との結合に関するゲルシフトアッセイ等の解析をした。その結果、AvrBs3因子ファミリーの繰り返し部がそれぞれの特異性決定に重要な役割を果たすが、この直後の領域も特異性決定に関与する事、AvrBs3ファミリーとUPAボックスとの結合性によって抵抗性反応の誘導と病原性発現のいずれかがスイッチオンされることがわかった。さらにカンキツ内のPthA結合分子が前駆体Pectin methylesterase (PME)であること、PthAとの結合によって前駆体PMEのプロセッシングがコントロールされていること、PthAがタバコ、トマトのPMEとは結合しない事が共焦点顕微鏡を用いたオニオン細胞内の局在性解析から分かった。また、カンキツPME前駆体が多くの植物病原細菌の非病原力因子に第三の結合因子として報告されているRIN4とも結合する事が分かった。これらの事から、PthAが前駆体PME,RIN4と、どのように結合するかによって、上記UPAボックスへの結合性、転写開始がコントロールされる事が予想された。従って、カンキツかいよう病耐性植物の作出する標的分子として、前駆体PMEの他にRIN4も加えなければならなくなった。
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