研究概要 |
サプレッサー機能抑制を制御して植物病原細菌の病原性を抑えることによる耐病性植物創出のための基盤研究を行い、下記の結果を得ることが出来た。①ピーマン斑点病菌のAvrBs3, カンキツかいよう病菌のかいよう形成因子であるPthA, その非活性型コピーApl2, Apl3,イネ白葉枯れ病菌のAvrXa7, AvrXa10のいずれもが、このエフェクターで誘導される植物遺伝子プロモーター領域に存在するupaBoxに結合することをゲルシフトアッセイにより示した。ただし、その結合力には差が見られたことから、各植物内の第3、第4の植物成分がこの結合力に影響を与えていることが示唆された。②カンキツPME前駆体のプロセッシングは、カンキツかいよう病菌のPthAとの結合によってコントロールされることを蛍光標識タンパク質で標識した後、共焦点レーザー顕微鏡観察で明らかにした。③PME前駆体とPthAの結合の他、RIN4もこの相互作用に関与することを明らかにした。④LrpXがhrpGの転写をコントロールしており、実際hrpGのプロモーター領域にLrpXが結合することをゲルシフトアッセイにより示した。⑤カンキツかいよう病菌が、植物のシグナルをXAC4131遺伝子産物がセンサーとして感知し、シグマ因子RpoEを活性化するXAC4130遺伝子産物を介して、主要なhrpオペロン制御遺伝子であるhrpGとhrpXを制御するカスケードを発見した。これらの複雑な制御の解明により、hrpオペロンの誘導を抑えてタイプIII分泌機構形成を抑えることにより、抵抗性誘導に関与するエフェクターの植物細胞内への注入を抑える戦略も耐病性植物の作出を可能にするものであることが示唆された。
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