研究課題/領域番号 |
22380030
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三瀬 和之 京都大学, 農学研究科, 准教授 (90209776)
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研究分担者 |
奥本 裕 京都大学, 農学研究科, 教授 (90152438)
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キーワード | 植物ウイルス / イネ / ブロモウイルス / 交雑系統 / 全身感染 / 病徴 / プロトプラスト / サイレンシング |
研究概要 |
前年度に引き続き、(A)植物因子、(B)ウイルス因子、(C)サイレンシング系の3プロジェクトを推進した。A-4)染色体断片置換系統群(CSSLs)を利用できる親品種が、明確な抵抗性、感受性を示したコシヒカリ/ハバタキのCSSLsの各ラインにBMV-F系統の感染試験を行った結果、単一染色体の特定の領域に感染性の決定因子が座乗することが明らかとなった。この染色体断片を持つラインをコシヒカリと戻し交雑後、自殖したF2種子が既に入手できていたため、それらを圃場で展開しgenotypingを行い、さらに各F2種子からF3種子を収穫した。F3集団を分子マーカーでスクリーニングし、当該領域の内部で組換えが起こっていると予想される系統を選抜し、BMV-Fの感染性を調査した結果、約600kbpにまで領域を絞り込めた。B-4)イネ品種IR64への感染性に重要であることが分かったRNA2を、感染するBMV-Fと感染しないBMV-KU2の間で組み換え、種々の遺伝子断片置換体や点突然変異体を作製し、感染性を比較した結果、RNA2がコードする2aタンパク質のC末端の4個のミスセンス変異によって感染性の差異が生じることが明らかとなった。プロトプラスト実験やGFP標識したウイルス変異体の感染実験により、この感染性の差異は細胞間移行のレベルで起こっていることが明らかとなった。B-5)イネ品種IR64に激しい壊死病徴を誘導するBMV-KU3と同程度に増殖するものの殆ど病徴を発現しないBMV-M2の間で種々の組み換えウイルスを作成し調査した結果、RNA2とRNA3に病徴発現に関与する因子が存在していることが判明した。C-2)野生型で病徴を殆ど発現せず、植物遺伝子を挿入した場合に効率良くVIGSを誘導するBMVベクターを作出するため、イネに効率良く感染できる系統として新たにKU4系統の遺伝子操作系を作出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物因子に関しては研究分担者の育種学研究室に既存のF2種子ストックが利用できたため、むしろ当初の計画以上に進展させることが出来た。ウイルス因子については特に問題点はなく、当初の予定通りに進められている。GFP遺伝子でタグしたウイルスを用いてイネの葉身におけるウイルスの可視化に成功する等計画以上に進展した点もある。サイレンシングベクターについては計画よりも若干遅れており、挿入箇所や挿入遺伝子の大きさ等に関する検討は進んでいない。研究プロジェクト全般では、概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
植物因子に関しては、候補となる組み換えF2ラインが未だ複数ライン残っているため、ポジショナルクローニングによってさらに標的遺伝子の領域を狭められる可能性が大いにある。引き続き狭めていくと共に、抵抗性の性質の調査、当該領域のゲノム配列の解析あるいは発現解析等を行って候補遺伝子を絞り込んで行く。候補遺伝子による形質転換イネの作出およびBMVの感染試験によって遺伝子のクローニングを完了させるのが目標であるが、困難な場合でも形質転換個体の作出までは完了する。ウイルス因子については複製酵素タンパク質2aの中でウイルスの移行に関わる領域を同定し、そこに相互作用する植物因子の単離に向けた実験系の構築を試みる。サイレンシングベクターについては、無病徴型のBMVベクターの構築を目指すと共に、より使い易い系としてイネへのアグロ接種の系の導入を検討していきたい。
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