研究概要 |
本課題研究では、イネ科植物いもち病菌のクロマチンリモデリング遺伝子をRNAiを用いて網羅的に解析する予定であった。しかし、RNAi変異体における遺伝子発現を調査した所、非ターゲット遺伝子における発現抑制が顕著に見られる例が散見されたため、RNAiスクリーニングによる結果を参考に、ターゲッティングによる遺伝子破壊法を併用して研究を進めることとした。RNAiスクリーニングにより、特に有望と推定されたヒストンメチルトランスフェラーゼ遺伝子群を対象として、これまでに7個の遺伝子(MGG_05254 , MGG_01661, MGG_15053, MGG_07393, MGG_02937, MGG_06852, MGG_10842)の破壊株を作製した。これら遺伝子破壊株の病原性を調査した所、MGG_15053破壊株では病原性が大きく低下していることが明らかとなり、またMGG_06852およびMGG_01661破壊株でも有意な病原性の低下が見られた。MGG_15053破壊株では、胞子形成能および付着器形成率も大きく低下していた。この付着器形成欠損は、そのシグナル因子であるcAMPを加えることにより回復したことから、MGG_15053は付着器形成のためのシグナル伝達に何らかの欠損があることが示された。また、ヒストン修飾に対する抗体を用いたウエスタンブロッティング解析から、MGG_15053はH3K4me2の修飾を、MGG_06852は、H3K9me3の修飾を、またMGG_07393はH4K20担っていることが明らかとなった。MGG_15053が担うH3K4me2修飾がいもち病菌の感染過程でどのように変化するかを明らかにする目的で、Chip-Seq解析を行った所、発芽管形成や付着器形成に特異的にH3K4me2修飾を受ける多数の遺伝子を同定することができた
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