研究概要 |
昆虫ウイルスの一種であるバキュロウイルスは、100kbp以上の2本鎖DNAをゲノムとして持つ大型のDNAウイルスであり、高度な宿主制御を行うことが知られている。バキュロウイルスゲノムには100個以上のタンパク質コード遺伝子が存在するが、非コードRNAの存在は知られていない。申請者は、ウイルス感染培養細胞のトランスクリプトーム解析によって、既報のORFをコードしない長鎖非コードRNAがウイルスゲノムから転写されている可能性を見いだしていた。今年度は、まず、ウイルス感染培養細胞から作成した完全長cDNAライブラリーのランダムシークエンシングから得られた5',3'端各約10,000クローンをウイルスゲノムにマップし、4679個の転写ユニットを同定した。また、ゲノム上に存在する後期遺伝子転写モチーフ(TAAG)のうち70%程度は実際に使用されていることを明らかにした。さらに、転写ユニットのなかには、50~100種の長鎖非コードRNAと思われる転写産物が存在した。そのうちの一部は、遺伝子ORFの5'端にクラスターをなしてマップされたことから、ORFの転写制御に何らかの役割を果たしていると考えられた(Katsuma et al., 2011, Journal of General Virology)。現在、非コードRNAだと考えられる転写物のプロモーターを欠損した組換えウイルスを作成中である。今後、それらのウイルスの性状を調べることで、ウイルスの長鎖非コードRNAの機能を知ることができると考えている。
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