研究課題/領域番号 |
22380034
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
岩見 雅史 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (40193768)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 昆虫変態 / インスリン / エクジソン / カイコガ / 血糖調節 / 個体発育 / 脳 / 神経 |
研究概要 |
本研究では主としてカイコガを用い、ホルモンの糖や脂質の代謝への影響を生理的側面から解析し、また、脳内でのシグナル伝達および処理機構を神経活動依存的に発現する遺伝子に注目して解析し、昆虫ひいては動物界に共通する個体全体の代謝、発育調節、脳内情報処理機構を探ることを目的とした。具体的には、①ホルモンや発生段階に伴う糖利用酵素の活性調節機構の解明、②性フェロモンに対する性行動を定型的行動のモデルとし、感覚情報による中枢神経回路での行動制御機構の解明、③プロボンビキシンCペプチドの作用検定系の確立、を目的とした。 ②について、次の実績が得られた。前年度までに神経活動依存的に発現する遺伝子としてHr38を同定していたので、これを利用した神経活動のマッピングを行い、性行動時に活動の起こった神経細胞の脳における分布を明らかにした。また、今年度はこれらの結果を出版するにあたり、論文のレフェリーから要求された追加実験等を行った。さらにHr38を発現する神経回路を可視化することを目的に、Hr38転写開始点上流2.6kb, 5kb及び第1イントロンを含む18kbのゲノム配列をGAL4の前に配置したコンストラクトを作成し、遺伝子組換えカイコガの作出を行った。しかしながら、これらのGAL4系統は神経活動依存的な発現を示さなかったことから、神経活動依存的なHr38の発現にはさらに遠位のエンハンサーが関与する可能性が考えられた。そこでHR38タンパク質自体の転写活性を利用することや、TALENを利用したノックインにて解決を試みることにし、そのためのコンストラクト及び系統の作出に着手した。 一方、当初計画の①についてはこれまでの研究ですでにほぼ達成済みであり、③については、時間的制約から本年度は実施できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経活動依存的に発現する遺伝子としてHr38を同定していたので、これを利用した神経活動のマッピングを行い、性行動時に活動の起こった神経細胞の脳における分布を明らかにできたことは一定の成果と判断している。しかし、時間的制約から、ホルモンや発生段階に伴う糖利用酵素の活性調節機構で新規の進展が見られないこと、また、プロボンビキシンCペプチドの作用検定系の確立には至っていないため、「(1) 当初の計画以上に進展している」ではなく「(2) おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
①ホルモンや発生段階に伴う糖利用酵素の活性調節機構の解明、②性フェロモンに対する性行動を定型的行動のモデルとし、感覚情報による中枢神経回路での行動制御機構の解明、③プロボンビキシンCペプチドの作用検定系の確立、を当初計画としたが、①についてはほぼ達成済みであり、昨年度時間的制約から実施できなかった③については、最終年度は実施せず、②に的を絞る。 具体的には、これまでにHR38の結合配列であるNBREの下流にコアプロモーターとGAL4を配置したベクター(NBRE-GAL4)を作成し、これを導入した遺伝子組換えカイコガを作出済みである。次年度は、この系統をUAS-GFP系統を掛け合わせることで性フェロモンに応答する神経回路の可視化を試みる。一方、Hr38転写開始点上流2.6kb, 5kb及び第1イントロンを含む18kbのゲノム配列をGAL4の前に配置したコンストラクトを作成し、遺伝子組換えカイコガの作出では神経活動依存的な発現を示さなかったことから、神経活動依存的なHr38の発現にはさらに遠位のエンハンサーが関与する可能性が示唆された。そこで、TALENによるノックインを行うべく、新規コンストラクトの作成を行い、受精卵へインジェクションを行い、ノックイン・カイコガの作出を試みる。
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