高等植物における硝酸に応答した遺伝子発現の分子機構を明らかにするために、シロイヌナズナの亜硝酸還元酵素遺伝子(NIR)プロモーター上に硝酸に応答した発現を担うシス配列NREを同定し、さらにNRE配列に結合するタンパク質の同定を行ってきた。今回、硝酸応答のためのシス配列NREがシロイヌナズナ以外の植物種でも保存されているかを検討するために、ホウレンソウ、マメ、トウモロコシなどのNIRプロモーターのDNA配列を調べ、これらのプロモーターはすべてNRE様配列を持っていること、また、これらのNRE様配列は少なくともシロイヌナズナの細胞内でNREとして機能することを明らかにして、硝酸応答機構は植物種間で保存されていることを示唆した。一方で、NRE結合タンパク質として同定したNBPタンパク質の転写因子としての機能解析をシロイヌナズナのプロトプラストを用いた一過的発現系によって行った。その結果として、NBPは植物細胞内でNREに塩基配列特異的に結合して転写を活性化する転写因子であることが明らかとなった。さらに、VP16転写活性化ドメインを融合させることにより転写促進因子としての活性を強化したNBPを発現している形質転換シロイヌナズナを作出して、この形質転換体における硝酸誘導性遺伝子の発現を調べることにより、NBPが植物体においてNREに結合してNIRを含むさまざまな硝酸誘導性遺伝子の転写活性化を行っていることを示唆した。
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