研究課題/領域番号 |
22380046
|
研究機関 | 独立行政法人農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
山口 紀子 独立行政法人農業環境技術研究所, 土壌環境研究領域, 主任研究員 (80345090)
|
研究分担者 |
橋本 洋平 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80436899)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 酸化還元 / 水田土壌 / カドミウム / X線吸収スペクトル |
研究概要 |
還元状態で生成する難溶性のCdが再可溶化し、作物に吸収されるリスクを評価するためには、土壌の難溶性Cdがどのような形態で存在するのか、その形態はどの程度安定か、を明らかにし、どのように可溶化するかを判断する必要がある。昨年度までのカラム実験で、Ehが-200mV以下まで低下しても、硫化カドミウムが土壌中Cdの主要形態とはならないことを示した。熱力学的平衡定数からは土壌中硫化カドミウムの生成割合を説明できなかった。これは、土壌全体が平均的に還元状態であっても、局所的には酸化的な領域、還元的な領域が混在するためであると考えられる。そこでさらに、Cdの局所分布と形態の関連を検証した。 水田から採取した低地土、黒ボク土でコシヒカリをポット栽培した。出穂期まで栽培をおこない、還元状態の土壌から根を含む領域を切り出し、土壌薄片を作成した。SPring-8 BL37XUにおいて、放射光源蛍光X線マッピングをおこない、根の周辺のCdおよびホスト相となる鉱物を構成する元素としてFe, Mnの空間分布を分析した。Cdの集積部位についてX線吸収スペクトル近傍構造(μXANES)の分析をおこない、局所領域におけるCdの形態を直接分析した。 Cdが集積している部位では、Feの存在割合が少なかった。Cd集積スポットにおけるCdの形態は、Cd-Sが主体であったが、鉄の分布もみられるスポットでは、Cd-Oが主体であった。Feの集積は、その部位が周囲と比較し、酸化的であることを意味する。Cdは、還元的なスポットに集積していると考えられた。イネの根のごく近傍は根の通気組織を介した酸素の供給により比較的酸化的であり、還元土壌から溶出した2価鉄が酸化沈着した鉄酸化被膜が存在する。このような領域には、Cdの集積がみとめられなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の第一の目的である水田土壌中での微小な酸化還元状態の変動が、カドミウムの分布と形態に影響していることを示す直接的な証拠をマイクロビームを用いたカドミウムの局所分析により示すことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
還元土壌で、難溶性の硫化カドミウムが還元的な領域に集積していることを示すことができた。水田土壌は、湛水-落水の繰り返しで酸化還元を繰り返す。今後は還元領域生成した硫化カドミウムが酸化し、可溶化するプロセスに着目し、予定していた実験を推進する。溶出抑制のための資材添加がどのようなメカニズムでカドミウムを不溶化させているかについても検討を開始する。
|