研究概要 |
細菌細胞の基本体制に付加された共生特異的な役割を探るという方針の下、ミヤコグサ根粒菌Mesorhizobium lotiのcep変異株、およびアルファルファ根粒菌Sinorhizobium melilotiのrpoH変異株の解析を中心に研究を進めた。cep変異のFix^-表現型を抑圧する3変異株とその親株それぞれのゲノムを超並列シーケンサーにより分析し、3種類のマッピングソフトウェアmaq、bwa、MUMmerによりサプレッサー株特異的な変異を検索した。その結果、3変異株それぞれのゲノムに合計731ヶ所、786ヶ所、2,213ヶ所の塩基置換・挿入・欠失の存在の可能性が検出された。そのうち確度の高い7塩基置換に着目し、それぞれ個別に親cep変異株に移して共生表現型を試験することにより、抑圧に有効な変異の特定を目指した。しかし、7つのいずれも不首尾に終わったため、解析対象としなかった他の変異、およびゲノム解析の際に用いたマッピングソフトでは検出されなかったような大規模ゲノム再編成等が抑圧に関与している可能性を考え、次年度の課題とした。アルファルファ根粒菌では、熱ショック処理を施した野生株およびrpoH変異株細胞のトランスクリプトーム比較結果の分析を進めた。各条件下での転写制御パターンの違いに基づいて各遺伝子をクラスタリングし、更にそのうち熱ショック誘導がRpoHの機能に依存するものの上流領域からコンセンサス配列の抽出を試みた。その結果、RpoH依存型の熱ショック遺伝子46個のうち、22遺伝子の上流に大腸菌のRpoHコンセンサスと類似の配列CTTGnAA-(15)-CCCATATを見つけるに至った。
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