根粒菌Sinorhizobium melilotiはアルファルファに根粒形成を誘導し、その細胞内で窒素固定を営むα-プロテオバクテリアである。H26年度は、機能不明ながら共生窒素固定に必須な役割をもつタンパク質をコードするSMc00302(sufT)遺伝子の機能解析を中心に研究を実施した。本遺伝子は、ゲノム上で鉄・硫黄(Fe/S)クラスター形成装置(SUFマシナリー)をコードするsufBCDS相同遺伝子と隣接した位置にある。当遺伝子の破壊株は、野生株と比べて鉄キレーターへの感受性上昇、最小培地での増殖速度の顕著な低下、種々のFe/S酵素の細胞内活性低下といった性質を示したことから、SufTはSUFマシナリーを介するFe/Sタンパク質生合成経路の効率化に関与し、この役割が共生成立過程で特に重要であると推定した。次に、最小培地での増殖速度を指標にしてsufT変異株のサプレッサー変異株を分離し、そのゲノム解析を行った。その結果、解析3株いずれにおいても、包括的Fe制御因子をコードするrirAのORF内に欠失変異が確認された。そこで、改めてsufT rirA二重欠失変異株を作製したところ、最小培地における増殖速度の回復、野生株と同程度のFe/S酵素活性・共生窒素固定能が確認された。以上より、SufT機能の欠損はRirAの欠損が引き起こす細胞内Feレベルの上昇によってサプレスされると判断した。このことは、いまだ解明されていないSUFマシナリーへのFeの供給機構に対するSufTの機能的関与を示唆するものである。
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