研究課題/領域番号 |
22380049
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研究機関 | 盛岡大学 |
研究代表者 |
徳田 元 盛岡大学, 栄養科学部, 教授 (40125943)
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キーワード | Lo1システム / リポ蛋白質 / 膜局在 / ペリプラズム / 分子シャペロン / ABCトランスポーター / 光化学架橋 |
研究概要 |
内膜上で成熟体となったリポ蛋白質を、その選別シグナルを認識してペリプラズムに遊離するのが、ABCトランスポーターLo1CDE複合体である。これは、膜サブユニットLo1CとLo1E各1分子とATPaseサブユニットLo1D2分子からなる。Lo1CとLo1Eはどちらも膜を2回貫通し、ペリプラズム側にLo1AやLo1Bに似た大きさの領域を露出している。Lo1CとLo1Eのアミノ酸配列は全体で26%同一であり、構造がよく似たサブユニットであるため、これらの膜サブユニットがどの様に機能を連携させてリポ蛋白質の遊離を触媒するかに興味が持たれていた。光架橋性のアミノ酸アナログをLo1Aに導入して調べたこれ迄の研究により、Lo1Aと相互作用するのはLo1CでLo1Eとは相互作用が見られなかった。そこで、外膜リポ蛋白質Palに光架橋性アミノ酸アナログを導入してLolC、Lo1Eとの相互作用を解析した。その結果、Lo1EはPalとの架橋産物を生成したが、Lo1CはPa1と相互作用することは無かった。内膜からの遊離は、ATPのエネルギーに依存し、ペリプラズム側に存在するLo1Aが必須である。ATPとLoLAの両方が存在する条件下でも、Pa1とLo1C間には架橋産物は形成されなかった。これらの結果は、構造のよく似た膜サブユニットは、機能を明確に分担してリポ蛋白質の遊離に関わっていることを示している。さらに、Pa1との架橋産物の解析から、Lo1Eに結合したPalはATPの加水分解によりLo1Eから解離し、この時にLolAがLo1C上に存在すればリポ蛋白質がLo1Aに受け渡されて、内膜から遊離するという反応の詳細が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
年度当初に予定していたPa1への光架橋性アミノ酸アナログによる解析が予定通り進行し、構造のよく似た膜サブユニットには、明確な機能分担があることが明らかになった。これは当初予想しなかった研究成果である。
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今後の研究の推進方策 |
リポ蛋白質がLo1CDEの作用により、内膜から遊離し、Lo1Aに受け渡される分子機構は明らかになった。一方、Lo1Aから外膜にアンカーしたLo1Bに受け渡される反応はATPなどのエネルギーの存在しないペリプラズムで起きる。この反応の詳細を構造学的に明らかにすることが今後の重要な研究課題である。
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