研究課題/領域番号 |
22380049
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研究機関 | 盛岡大学 |
研究代表者 |
徳田 元 盛岡大学, 栄養学部, 教授 (40125943)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Lolシステム / リポ蛋白質 / 膜局在化 / ペリプラズム / 分子シャペロン / エンベロープストレス / 細胞表層構造 |
研究概要 |
内膜上で成熟体となったリポ蛋白質は、LolCDE複合体の作用により内膜から遊離する。この時、ペリプラズムに存在するリポ蛋白質特異的分子シャペロンLolAとの可溶性複合体が形成され、親水性のペリプラズム空間を横断して外膜に到達できるようになる。これまでに、極めて強い優性欠損変異体LolA(I93C/F140C)を分離している。この変異体は、還元剤が無いとシステイン間のジスルフィド結合によりLolAの疎水性キャビティーを閉じてしまうため、リポ蛋白質を結合できない。一方、LoCDEと相互作用する機能は保持しているため、強い優性欠損変異体となり、その結果リポ蛋白質の外膜輸送は強く阻害される。この変異体をプラスミドから発現すると、染色体上のlolA遺伝子の発現が大きく促進されることを見いだした。この機構を明らかにするため、lolA遺伝子の発現ができない変異体を分離して解析したところ、Rcsリン酸リレーシステムが直接lolA遺伝子の発現制御に関わっていることが明らかになった。Rcsシステムの構成因子の一つであるRcsFは、外膜リポ蛋白質であり、この発現制御に必須であった。また、RcsFを内膜局在型に変えた変異体では、Rcsシステムが構成的に活性化された。これらのことを総合すると、外膜へのリポ蛋白質の運搬ができなくなると、RcsFがこれをストレスとして感知し、lolA遺伝子の発現を誘導すると考えられる。これまでリポ蛋白質輸送の欠損が細胞にとってストレスとなることは知られて無く、本研究によって始めたリポ蛋白質輸送がRcs系によってモニターされていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リポ蛋白質輸送が細胞のストレスとなり、それを解消する機構が発動されることはこれまで、知られていなかった。今年度の研究でこれが初めて明らかになり、その機構の詳細を解析する新たな研究方向が示された。
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今後の研究の推進方策 |
RcsFがRcs系のリスポンスレギュレーターと実際に複合体を形成し、これが引き金となってlolA遺伝子の発現を活性化することを証明すること。 リポ蛋白質の外膜局在化を触媒するLolBの作動機構は不明の部分が多い。LolBの変異体を分離しているので、この反応を解析する。 膜蛋白質の挿入に重要な役割をするMPIaseの分子機構については、LolBと関連していることが推測される。MPIaseー膜蛋白質複合体と、LolBーリポ蛋白質複合体の類似点を明らかにする。
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