環境汚染物質であるポリ塩化ビフェニルとジクロロジフェニルトリクロロエタンの分解酵素系の誘導性改良をめざし、分解菌Rhodococcus jostii RHA1における転写制御機構解明と転写制御因子改変を目的とし、以下の成果を得た。(1)BphSTのシグナル伝達機構の解明:培養菌体の粗精製タンパク質をフォスタグ電気泳動後、ウェスターンブロットによりBphTを検出したところ、ビフェニルで培養した場合にのみBphTのリン酸化が認められた。また、BphSを欠失した株ではリン酸化は見られず、BphTがBphSと誘導基質に依存してリン酸化されて転写を活性化することを明らかにした。(2)BphTと相互作用する転写複合体の解明:シグマ因子候補遺伝子のライブラリーをRHA1に導入して、ビフェニル分解酵素遺伝子の転写に関わるシグマ因子の同定を試みたが、成果は得られていない。そこで、bphAa遺伝子プロモーターと相互作用する転写複合体からシグマ因子を同定するため、BphT抗体を用いた免疫沈降による転写複合体の回収する系を構築した。今後はこの系をスケールアップしてシグマ因子の同定をめざす。(3)誘導基質特異性にかかわるアミノ酸残基の同定:N末領域のアミノ酸配列の置換により、基質特異性決定にかかわるアミノ酸残基を12残基に絞り込んだ。また、BphTが相互作用するDNA結合配列についての検討を前倒ししておこない、配列比較により決定した18塩基ではなく24塩基が相互作用することを明らかにした。以上の結果により、転写複合体の解明はこれからであるが、BphSTのリン酸化によるシグナル伝達とDNA配列への結合を含む転写活性化機構を明瞭に解明することができた。
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