環境汚染物質であるポリ塩化ビフェニル(PCB)分解酵素がPCB自体で誘導される分解菌の開発をめざし、分解菌Rhodococcus jostii RHA1における分解酵素誘導にかかわる転写制御機構解明と転写制御因子改変を目的とし、以下の成果を得た。(1)転写制御配列の解析:プロモーター領域を欠失した安息香酸ジオキシゲナーゼ遺伝子上流にBphTが作用すると予想される24塩基のDNA配列を連結し、bphS1T1遺伝子を共存させたRhodococcus宿主株の組換え体で転写活性を調べたところ、誘導物質(ビフェニル)存在下でBphSTに依存した明確な転写誘導が見られた。誘導基質非存在下ではBphTによる基礎レベルの転写活性化が観察され、24塩基配列がBphTを介した転写活性化に必要十分であることが示唆された。点変異を導入したところ、誘導基質やBphTがない場合の転写活性にも著しい変化が観察され、24塩基配列自体が独立のプロモーターとして機能し得ることが示唆された。(2)BphTと相互作用する転写複合体の解明:抗BphT抗体を用いた免疫沈降によりBphTを含む転写複合体を回収する試みを既に行ったが、果たせなかった。そこで、24塩基配列を含むDNA断片をプローブとして結合した磁気ビーズを用いたところ、細胞抽出液から多くのタンパク質が回収できた。回収したタンパク質を二次元SDS-PAGEで分離し、MALDI-TOF/MSで分析した結果、転写に関連すると思われるWhiA様転写因子やCRP-FNR型転写因子が同定された。回収したタンパク質の同定を進めることにより、転写複合体を構成するタンパク質を解明出来ると期待される。以上の結果より、BphSTによる24塩基配列を介した分解酵素遺伝子オペロンの転写制御機構を明らかにすることができた。
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