研究概要 |
グリセロールからのジヒドロキシアセトン(DHA)発酵に関与するキノプロテイン・グリセロール脱水素酵素(GLDH)が,その他の酸化発酵,特にこれまでフラボプロテインが関与すると考えられていたケトグルコン酸発酵やソルボース発酵でもその中心として働いていることが明らかになった。本研究では,このGLDHを中心に複数の酵素が同一の発酵系に関与することの生理学的意義,それらの酵素が連結して機能する酸化発酵呼吸鎖の構造,さらに酸化生成物の資化に関わる膜輸送・資化酵素系の解析を含めて,「酸化発酵」の分子機構を全般的に明らかにしようとしている。以下,22年度に得られた成果をまとめる。(1)ソルボース発酵において中心で機能するGLDHはシアン感受性チトクロムbo_3に強くリンクしエネルギー生成に関与しているのに対し,培養後期に誘導されるフラボプロテイン・ソルボース脱水素酵素はシアン耐性オキシダーゼ(CIO)と連結し機能することが明らかになっている。今回,ケトグルコン酸発酵において2-ケトグルコン酸の生成資化に関与するフラボプロテイン・グルコン酸脱水素酵素が同様にCIOと強く連結して機能することが明らかになった。(2)GLDHが関与するDHA生成反応は,別のキノプロテイン・アルコール脱水素酵素(ADH)によるグリセリン酸生成反応と競合していることを明らかにし,GLDHおよびADHを別々に遺伝子破壊することで,グリセリン酸およびDHAの生成を増進できることを明らかにした。(3)ソルボースおよびDHAの資化に関与する細胞内資化系酵素ソルボースおよびDHA還元酵素のクローニング,精製,結晶化に成功し,現在,これらの構造・機能解析を進めている。(4)酸化発酵の1つに,キノプロテイン・キナ酸脱水素酵素の関与するデヒドロキナ酸発酵がある。この酵素遺伝子の解析を行うとともに,その発酵能力を利用したシキミ酸合成系の開発に成功した。(5)酢酸菌に4-ケトアラボン酸を生成する新規な「酸化発酵」系を見いだした。
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