研究課題
本研究課題では、炎症性サイトカインによる遺伝子発現に対するトリコテセン系化合物の影響を検討した。デオキシニバレノールは、IL-1αに比べて、TNF-αによるICAM-1の発現誘導を選択的に阻害した。一方、3-アセチルデオキシニバレノールは、TNF-αによるICAM-1の発現誘導に対して選択的な阻害を示したが、T-2トキシンやベルカリンでは、選択的阻害がまったく観察されなかった。さらに、デオキシニバレノールや3-アセチルデオキシニバレノールがTACEを介してTNFレセプター1のエクトドメインを誘導していることを見出した。以上の結果から、特定のトリコテセン系化合物のみがTNFレセプター1のエクトドメインシェディングを誘導することによって、TNF-α応答性の遺伝子発現を選択的に抑制していることが明らかになった。本研究課題では、オイデスマン骨格を有するセスキテルペンを合成し、転写因子NF-κBシグナル伝達経路に対する構造活性相関を検討した。その結果、オイデスマン誘導体が分子構造のわずかな違いにより、TNF-αやIL-1αによって活性化されるNF-κBシグナル伝達経路において異なるステップを阻害することが明らかになった。これらの研究成果の一つとして、α-ブロモケトン構造をもつ(11S)-2α-bromo-3-oxoeudesmano-12,6α-lactoneが、IL-1αで刺激した場合、IκBαのリン酸化と分解を阻害するが、TNF-αで刺激した場合、1κBαのリン酸化と分解を阻害せず、NF-κBサブユニットp65の核移行を選択的に阻害することを見出した。以上の結果から、オイデスマン誘導体は炎症性サイトカインによるNF-κBシグナル伝達経路を解析するための有用なバイオプローブであると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
現在までに、炎症性サイトカインの情報伝達に対するタンパク質合成阻害剤(トリエン-アンサマイシン系化合物、トリコテセン系化合物)及びオイデスマン骨格を有するセスキテルペンの作用メカニズムを解明し、これらの化合物がバイオプローブとして有用であることを示した。
本研究課題では、これまでの研究成果を踏まえ、独自に同定した小分子化合物の作用メカニズムを解析する。さらに、新しいバイオアッセイ系を構築し、新規な作用メカニズムを有する小分子化合物を探索する。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (12件)
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