研究課題
PABN1の生理機能を解明するため,今年度は,PABN1過剰発現体が示す形態上の表現型について解析した.興味深いことにPABN1oxは花茎の分枝に顕著な表現型を示した.その特徴は,主茎が短く,側茎が異常に増加するというものであった.このような特長はシロイヌナズナのmaxと呼ばれる一連の変異体の表現型と酷似していた. max変異体はSLの生合成或いは認識の変異体であることが最近の研究で明らかになっている.そこで,PABN1oxはSL生合成の欠損或いはSL認識,シグナル伝達の欠損のいずれかであろうと仮説を立て,まずSL生合成遺伝子の発現を調べた.MAX1遺伝子の発現は野生株,PABN1ox間で殆ど変化なかったが,MAX4の発現がPABN1ox株で大きく上昇していた.MAX4の発現上昇はSLレベルの上昇を示唆するが,SLが花茎分枝の抑制因子である点を考えるとPABN1oxが示す多分枝の表現型と矛盾する.また,MAX4はSLによりフィードバック制御を受けるが,MAX1は受けないことが知られている.これらの点を踏まえて,PABN1ox ではSLの生合成ではなく,シグナル伝達機構に欠損を生じていると考えられた.SLの受容に関わるMAX2の発現は正常であったことから,その下流がPABNの作用部位ではないかと推定された.また,PABN1と複合体を形成するタンパク質を酵母ツーハイブリッド法によりスクリーニングしたところ,複数の相互作用因子が同定された.この中でSquamosa promoter binding protein-like 4 (SPL4)に着目した.SPL4はAtCSP3との相互作用因子としても同定されており,AtCSP3-PABN1-SPL4からなるmRNP複合体の形成が示唆された.今後はこのSPL4の機能解析と複合体としてどの様な調節を受けるのかを明らかにする必要がある.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Cell Stress and Chaperones
巻: 18 ページ: 印刷中
10.1007/s12192-012-0398-3
New Phytologist
巻: 198 ページ: 95-102
10.1111/nph.12118