研究実績の概要 |
(1)種々の合成シアロ糖鎖を用いて、血管内皮細胞に発現する接着分子PECAM (platelet endothelial cell adhesion molecule)の糖鎖認識特異性ならびに相互作用を解析した。その結果、PECAMの相互作用をシアリル化オリゴ糖が抑制すること、さらに血管内皮細胞に添加すると、細胞接着部位に存在するPECAMの局在が変化することを見出した。一方、PECAM自身がα2,6-シアリル化糖鎖を有することが分かり、結果を総合すると、PECAMは自身が持つシアリル化糖鎖を認識するレクチン活性を介してホモフィリックに相互作用していることが明らかとなった(Journal of Biological Chemistry, 289, 27604-27613, 2014)。 (2)セレン原子の異常散乱性を利用するX線結晶構造解析法(MAD法、SAD法)はタンパク質の立体構造解析の有力な手法である。p-methylselenobenzoic anhydride (Tol2Se)を新しいセレノ化剤として4種のセレノラクトース類縁体を合成し、ヒトガレクチン9との共結晶化及びMAD/SAD法によるX線結晶構造解析を試みた。その結果、6-MeSe-lactoseのみが共結晶を与え、lactose同様にガレクチン9に認識されることが分かった(Bioorganic & Medicinal Chemistry, 22, 2090-2101, 2014)。また、グリコシルイミデートから各種のセレノグリコシドを得る新規セレノ化法を開発した。この手法は様々なセレノ糖鎖合成に有用である(Tetrahedron Letters, 55, 1920-1923, 2014)。 (3)ABO血液型糖鎖の新しい合成法の開発に成功した(Molecules, 19, 414-437, 2014)。
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