研究課題/領域番号 |
22380068
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森 直樹 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30293913)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 植物の誘導抵抗性 / 対抗適応 / 昆虫-植物間相互作用 / エリシター / 害虫管理 / volicitin |
研究概要 |
申請者は、昆虫の唾液成分volicitin [N-(17-hydroxylinolenoyl)-L-glutamine]により誘導される植物の抵抗性に注目し、特に昆虫類に見出されるvolicitin類の構造の多様性、その生合成経路の解明および植物における反応性の違いをテーマに研究を進めている。 ・Volicitin類縁体のエリシター活性 平成23度に、申請者らは新規エリシター活性物質18OH-volicitinを同定した。平成24年度には、18OH- volicitin、17OH-volicitinやN-linolenoyl-L-glutamineやN-linolenoyl-L-glutamic acid のエリシター活性をトウモロコシとナスで調べた。その結果、トウモロコシでは17OH-volicitinが18OH-volicitinよりも、またグルタミン縮合物がグルタミン酸縮合物よりも活性が強かったが、ナスでは活性に差は認められなかった。 ・脂肪酸-アミノ酸縮合酵素の精製 申請者は、本プロジェクトにより購入したタンパク質精製システムを最大限に活用し、カイコ腸管からリノレン酸とグルタミンを縮合する酵素の精製を進めている。現在、カイコ中腸細胞から精製・分画した縮合活性画分に含まれるタンパク質をトリプシン消化した後、PMFにより同定を試みた。その結果、Aminopeptidase Nと推定されたが、これは4年前にタバコスズメ幼虫中腸から精製した縮合活性タンパク質と同じであった。また、データベースを要しないプロテインシーケンサーによるアミノ酸配列の同定を試みたが、目的蛋白質のN末端がブロックされていた。現在はトリプシン消化ペプチドを精製して再度プロテインシーケンサーで内部配列解読を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に、本プロジェクトで同定した新規エリシター成分18OH-volicitinを含めた4種のvolicitin類縁体を用い、それらのエリシター活性をトウモロコシとナスで調べた。その結果、植物によりvolicitin類縁体に対する反応性が異なることを見出した。また、カイコ腸管からリノレン酸とグルタミンを縮合する酵素の精製を進め、Aminopeptidase Nと推定されるタンパク質の精製に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、植物種におけるvolicitin類縁体の反応性の違いにおける生態学的な意味の解明を進める。数種の鱗翅目幼虫の唾液成分のvolicitin類縁体の組成、その食草およびエリシター反応性を調べる。一方、カイコの中腸抽出物中から精製した活性画分には、同定できなかったタンパク質が少なくとも3種混在していた。そこで、そのトリプシン消化物を電場型フーリエ変換質量分析機器(Orbitrap/LCMS)にてMSMS測定し、より高精度なMSスペクトルを得た。しかしながら、明瞭なMSデータにもかかわらずデータベースに相同性のあるタンパク質が該当せず、鱗翅目幼虫中腸タンパク質に関するデータベースの貧弱さが壁となっていることが明らかとなった。そこでデータベースを要しないプロテインシーケンサーによるアミノ酸配列の同定を試みたが、目的蛋白質のN末端がブロックされていた。現在はトリプシン消化ペプチドを精製して再度プロテインシーケンサーで内部配列解読を試みている。
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