研究概要 |
フランスのグループによってMyc factorとしてAM菌から単離された硫酸化および非硫酸化Myc-LCOとそれらのアシル鎖改変誘導体(計14種)を出発原料としてキチン4糖を用いて化学酵素法により合成した。これらについて野生型ミヤコグサ実生根に対する共生マーカー遺伝子(SbtS,SbtM1,NIN,NSP2)発現誘導活性をqRT-PCRにより調べたところ、非硫酸化Myc-LCOおよびアシル鎖としてC16:1Δ11Z,C20:1Δ11Zを持つLCOが顕著な活性を示した。硫酸化Myc-LCOはほとんど全く活性を示さなかった。次に、強い活性を示した非硫酸化Myc-LCOについて、Nod factor受容体変異体であるnfr1,nfr5,nfr1/nfr5に対する共生マーカー遺伝子発現を調べたところ、ほとんど全く発現誘導は見られなかった。そこでnfr1,nfr5,nfr1/nfr5変異体についてAM菌の接種実験を行い、菌根形成を野生型と比較したところ、感染率および菌根表現型に全く差はなく異常は認められなかった。以上のことから、Myc-LCOによる共生応答の誘導はNod factor受容体を介して起こっており、Myc-LCOがMyc factorとして機能している可能性は極めて低いことが示唆された。AM菌Glomus intratadicesの菌体抽出物、培養濾液および菌体抽出残渣についてミヤコグサnfr1変異体根に対する共生マーカー遺伝子発現誘導活性を調べたところ、これら3つの試料すべてにおいて顕著な活性が見られ、AM菌がMyc-LCO以外の共生シグナル物質を生産していることが明らかになった。現在、本活性物質の精製を進めている。
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