研究課題/領域番号 |
22380075
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 信之 京都大学, 農学研究科, 助教 (50370135)
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研究分担者 |
河田 照雄 京都大学, 農学研究科, 教授 (10177701)
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キーワード | メタボリックシンドローム / 生活習慣病 / 食後高脂血症 / PPAR / 脂肪酸酸化 / 腸管上皮細胞 |
研究概要 |
食後高脂血症は、近年、動脈硬化の新しいリスクファクターと考えられている。したがって、食後高脂血症を抑制することが、動脈硬化を予防・改善する上で、大変、重要と考えられる。本研究では、腸管上皮細胞での脂肪酸酸化亢進が、生体内へ取り込まれる脂肪量を減少させる、すなわち食後高脂血症を抑制するのではないかという仮説を立て、腸管上皮細胞株や実験動物を用いて、その仮説の検証を行っている。 平成22年度までに、肝臓や骨格筋において脂肪酸酸化を亢進させるペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)の腸管上皮細胞における活性化が、食後高脂血症を抑えるかどうかについて検討した。その結果、PPARα活性化剤であるベザフィブレートの投与が、食後高脂血症を抑えうることを明らかにし、論文として報告した(Kimura,R.,et al.BBRC 2011)。そこで平成23年度は、腸管上皮細胞におけるPPARα活性化が、食後高脂血症抑制にどの程度寄与しているかを明らかにするため、PPARαノックアウトマウスなどを用いて、さらなる検討を行った。PPARαノックアウトマウスでは、ベザフィブレート(PPARα活性化剤)の投与による食後高脂血症の抑制が認められなかった。したがって、ベザフィブレート投与による腸管上皮細胞での脂肪酸酸化亢進の食後高脂血症抑制作用は、PPARαを介したものであることが示唆された。またベザフィブレートを投与しない生理的条件下においても、食後高脂血症が悪化することから、生理的にも腸管上皮細胞における脂肪酸酸化が食後高脂血症に作用しうることが示唆された。 以上のことから、腸管上皮細胞におけるPPARα活性は、脂質の生体内への取込に重要な調節因子であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
腸管上皮細胞における脂肪酸酸化調節因子としてのPPARαの機能解析は、順調に進行しており問題ないが、もう一つの調節因子として検討を予定しているレプチンについては、レプチン欠損マウスにおいて食後高脂血症が悪化するため、調節因子として作用していることは示すことが出来たが、投与方法等の条件検討が終了せず、平成23年度には、それ以上の進展がなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
PPARαノックアウトマウスでは、全身のPPARαが欠損しているため、肝臓や骨格筋での脂肪酸酸化の亢進が寄与している可能性を否定することが出来ない。そこで、アデノウイルスを用いたRNAiによる腸管上皮細胞特定的なPPARα欠損マウスを作製し、腸管上皮細胞における脂肪酸酸化の生理的意義を明らかにする。 レプチンに関しては、実験条件を早急に決定し、レプチンが腸管上皮細胞での脂肪酸酸化を亢進させるのかについて明らかにする。投与方法等の実験条件以外は、PPARαの機能解析を行った際に用いた実験系を利用できるため、研究の進行には問題ないと思われる。
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