研究課題/領域番号 |
22380076
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田辺 創一 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 教授 (90272624)
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研究分担者 |
鈴木 卓弥 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 講師 (30526695)
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キーワード | 腸管バリア / タイトジャンクション / 乳酸菌・ビフィズス菌 / フラボノイド |
研究概要 |
腸管上皮バリアは、食物や外来異物と体内とを仕切るために極めて重要であり、その制御が崩れることは種々の疾病に繋がる。本研究は、炎症・免疫異常による腸管バリア損傷、および乳酸菌・ビフィズス菌やフラボノイドなどの食品成分による同バリア修復メカニズムを解析するとともに、バリア保護あるいはアレルギー抑制に優れる食品の開発をめざすものである。 本年度に得られた研究結果は以下の通りである。 1)デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導腸炎マウス(以下、DSSマウス)におけるビフィズス菌・ナリンゲニンの腸管バリア修復・腸炎保護効果を確認し、メカニズム解析を行った。 2)特にビフィズス菌では、炎症に関わるTh17細胞に着目して解析した。Bifidobacterium longum subsp.infantis(以下、B.infantis)は腸管のTh1/Th17活性化を抑制することによって大腸炎を緩和することを示した。DSSマウスの大腸上皮細胞は、CD80やCD40などの共刺激分子を高発現しており、抗原提示細胞のごとくCD4^+T細胞と相互作用し、Th1/Th17細胞の分化を誘導することが明らかになった。B.infantisはこれらの共刺激分子の発現増加を抑制し、Th1/Th17活性化を抑制することが示唆された。すなわち、B.infantisは免疫細胞に直接作用するのではなく、大腸上皮細胞に作用することでTh1/Th17細胞を抑制するという、新たな免疫調節作用機序を見出した。 上記1,2)に加え、腸管と類似する粘膜免疫機構を有する皮膚バリアにも着目し、乳酸菌・ビフィズス菌などによる皮膚バリア修復作用の検討とそのメカニズム解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DSSマウスにおける腸炎誘発メカニズムとして、CD80やCD40などの共刺激分子あるいはTh1/Th17分化という新しい機構を明らかにできた。また、B.infantisが、本マウスの大腸上皮細胞に作用することで炎症を抑制することを実証した。加えて、腸管バリア保護効果を高める乳酸菌・ビフィズス菌の培養法も確立することができた。これらのことは、腸管バリア保護食品の開発に具体的に寄与するものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらに、乳酸菌・ビフィズス菌による腸炎回復機構について、フローサイトメトリ、multiplex real time PCR、ウェスタンブロットなどを用いて、上皮バリア・腸管免疫細胞両面から解析する。今年度新たに見出したCD40-CD40Lシグナルなどをはじめとして、免疫細胞で発現する遺伝子群の変動を統合的に解析する。さらに、上皮タイトジャンクションバリアを構成するタンパク質群の発現解析や、TJ構造の顕微鏡観察などを行う。
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