研究課題
基盤研究(B)
近年、樹木種の環境適応とその遺伝的メカニズムが注目されている。本研究では、1200mの標高差を持つ東京大学北海道演習林において、以下の4つの研究を行った。(1)多地点の毎木調査とGISで抽出した環境条件データから、主要針葉樹の資源分布と更新パターンを特定した。トドマツは低~中標高域、エゾマツは中~高標高域で資源量が多く、標高はトドマツ更新木の個体数に負の効果、エゾマツのそれに正の効果を及ぼしていることが明らかになった。(2)トウヒ属樹木が産生するフェノリクスとテルペノイドの生合成経路に着目し、標高分化と関連する適応的な遺伝子の探索を行った。フェノリクス生合成に関連する既知の遺伝子(CHSとSTS)ではパターンの類似性が高くマーカー化が難しかったが、テルペノイド合成に関連する新規の遺伝子(PAL)について、トウヒ属で初めて塩基配列を解読し、マーカー化の可能性を開いた。(3)トドマツの標高間相互移植試験地を用いて、樹高と生存率が自生標高に適応的かどうかを評価した。その結果、自生標高から移植地までの標高差が大きいほど、生産力(樹高×生存率)が低下するホームサイト・アドバンテージが成り立つことを数理モデルによって検証した。また、耐凍性試験を行い、耐凍性獲得タイミングに標高間変異が存在することを示した。(4)トドマツ標高間の相互交雑試験地(低×低、低×高、高×低、高×高)において、繁殖形質と成長形質を調査し、個体の繁殖および成長に由来標高が及ぼす影響を調べた結果、高標高由来個体で繁殖量が有意に多く、低標高系で成長量が有意に大きいことが示された。
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