研究課題/領域番号 |
22380081
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
富樫 一巳 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (30237060)
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研究分担者 |
松永 孝治 独立行政法人森林総合研究所, 林木育種センター, 主任研究員 (40415039)
杉本 博之 山口県農林総合技術センター, 林業技術部, 専門研究員 (00522244)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | マツノザイセンチュウ / 抵抗性 / 毒性 / 媒介昆虫 / IPM / ニセマツノザイセンチュウ / マツノマダラカミキリ / スクリーントラップ |
研究概要 |
マツの抵抗性と病原線虫の毒性の関係を明らかにするために,毒性の異なる病原線虫(2アイソレイト)の比率を1:0,3:1,1:1,1:3,0:1に調整し,さらに接種個体数を変えて,抵抗性のクロマツ1家系の苗に接種した。その結果,50%の苗を枯らす線虫数は中毒性線虫が19000頭,強毒性線虫が8400頭,前者と後者の比率が1:3,1:1,3:1の時それぞれ5900頭,5500頭,7200頭であると推定され,抵抗性の多様性は林分の枯死率を高めると推定された。また,毒性の異なる4アイソレイトの線虫を,抵抗性の程度の異なるクロマツ8家系の苗に,5段階の線虫数で接種したところ,枯死率はクロマツ家系,線虫アイソレイト,接種数およびアイソレイト×接種数の統計モデルのAICが最小になり,マツの枯死に線虫の毒性と接種数の交互作用が影響を与えることが示された。 病原線虫の毒性と伝播力の関係を明らかにするために,近年発見された極めて毒性の強い病原線虫を保持する媒介昆虫を実験的に得て,マツ枝への伝播線虫数を数えながら飼育した。その結果,線虫初期保持数が千頭台である昆虫からの伝播のピークは日齢20~25で,その時の平均伝播数は111.3 頭であった。この値は従来の値より高いとはいえなかった。 簡易な媒介昆虫密度調査法を確立するために,生残木が全て枯れる林分で昆虫個体群の特性を調べた。その結果,脱出成虫密度が35,000頭/haと推定される林で,トラップ(合計面積10㎡)に1042頭の成虫が捕獲され,性比は季節的に雄に偏った性比から雌に偏った性比に変化した。 山口県内の抵抗性の1マツ林ではトラップで媒介昆虫11頭が捕獲されたが,枯死木は出現しなかった。これに対して,41頭捕獲された林では3本のマツが枯れた。昨年の結果と合わせると,媒介昆虫密度がある閾値を越えると林内で病気が発生することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シミュレーションモデルの構築が少し遅れているが,その他の研究課題については順調に成果が上がっている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策は当初計画どおりに行うことで問題はないと考えている。ただ,成果がどんどん出ているのに,それらが論文として7編しか公表されていない。研究成果を着実に論文として発表していくことが最大の課題である。
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