森林に生育する樹木のほとんどの細根には菌根菌が共生し、大量の炭水化物を樹木から受け取っている。しかし、至要なカーボンシンクである菌根や菌糸体(菌根から土壌中に伸びる無数の菌糸)が脱落した後の分解過程や、それにともなう物質循環についてはほとんど分かっていない。そこで本研究では、菌根や菌糸体がどのような微生物によって、どれくらいの速度で分解されるのか、分解過程でどれくらいの養分がどのようにして再利用されるのかなど、樹木細根系の物質循環に関する重要な学術的知見を得ることを目的とする。得られる成果は、樹木個体レベルから森林全体の炭素・窒素収支モデルに不可欠なものであり、地球温暖化防止対策における森林吸収源の再評価など応用的価値も高い。初年度である今年度は、分解実験に使用する菌根を大量に生産することを行った。まず、アカマツ実生に20種の菌根菌を接種した。菌根の形成が確認できた10種については、感染した菌根苗をプランターに移植した後、その周りに滅菌したアカマツの種子を播種し、大量の菌根苗を生産した。
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