研究課題
森林に生育する樹木のほとんどの細根には菌根菌が共生し、樹木が必要とする養分のほとんどを菌根菌が供給している。一方、その代償として、樹木は光合成産物の約2割を菌根菌に供給している。このため、菌根菌の菌糸と樹木の細根は、地上部の落葉を遥かに上回る有機物を毎年土壌中に供給していると考えているものの、その分解過程についてはほとんど分かっていない。菌根菌を含めた樹木細根系という大きなカーボンシンクの動態は、森林の物質循環だけでなく、地球規模の炭素動態を考える上でも明らかにしなければ行けない課題であると考えられる。そこで本研究では、菌根や菌糸体がどのような微生物によって、どれくらいの速度で分解されるのか、分解過程でどれくらいの養分がどのようにして再利用されるのかなど、樹木細根系の物質循環に関する重要な学術的知見を得ることを目的とする。本課題では、樹木の菌根をメッシュバッグにつめて森林土壌中に埋設し、分解過程を追跡するという手法を採用する。今年度は、予定している調査地の土壌を採取し、そこにどのような菌根菌が存在しているのかについて、成木の菌根と土壌中の埋土胞子の両面から検討した。また、根圏に存在するバクテリアの群集についても調べた。現在までに、予定している調査地の土壌中には数多くの菌根菌が存在していること、成木に共生して菌根として存在している菌種と、埋土胞子の形で存在している菌種はその組成が大きく異なること、樹木の細根には数多くのプロテオバクテリアが生息していることなどが明らかとなった。今後は分解過程を詳細に検討していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
研究代表者の異動により、研究環境が大きく変わり、課題実施のために必要なスペースや機材の確保などに、時間、労力、予算をさくことになったため。
当初の研究目的は変更しないものの、一部の実施内容は変更することで、予定されている研究予算で研究期間内に十分な成果が挙げられるようにする。
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Molecular Ecology
巻: 21 ページ: 281-299
10.1111/j.1365-294X.2011.05392.x
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