●ナラ菌に対する各樹種の感受性とエチレン生成の関係:刺激伝達物質処理が菌の蔓延に及ぼす影響を検証し,刺激伝達物質処理によるナラ枯れの人為的防除が可能かどうか検討した。実験材料として,3年生のミズナラ,コナラ及びアベマキの苗木を用いた。ナラ菌接種は2013年7月4日に行った。接種から0,3,7,14日目に,接種部位のエチレン放出量を測定した。この結果、ミズナラとコナラのエチレン生成量は菌処理・無菌処理どちらも3日目が最大となった。3樹種全てにおいてエチレンは3日目に多量に生成されたが,ミズナラとコナラは7日目には大幅に減少した。一方,アベマキは7日目以降もエチレン生成量が低下しなかった。 ●刺激伝達物質処理が菌の蔓延に及ぼす影響:実験材料は3年生のミズナラ,コナラ,アベマキ及びナラガシワの苗木を用いた。処理区は,エスレル、ジャスモン酸メチル、サリチル酸ナトリウムそれぞれ単体、あるいは組み合わせ処理,合わせて7処理区とした。薬剤処理は,2013年7月1日に行った。薬剤を注入した翌日にナラ菌を接種した。菌接種から2週間後の変色長を計測した。菌の検出に用いられる2種の染色剤によって菌糸の有無を観察した。この結果、コナラとアベマキは薬剤処理により菌の引き起こす病理的心材の形成が抑制された。 ●沈香の生産技術開発:沈香の人為的な生産技術の開発のため、タイ王国においてAquilaria crassna樹の樹幹にエスレル(E),ジャスモン酸メチル(MJ)、およびサリチル酸ナトリウム(SA)の処理による生産促進の実証実験を行った。その結果、3種の混合処理によって樹幹の着色が促進されることを確認し、研究論文として取りまとめ、国際学会において招待講演をおこない、国際誌に投稿した。
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