研究課題/領域番号 |
22380091
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
田端 雅進 独立行政法人森林総合研究所, 森林微生物研究領域, 室長 (40353768)
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研究分担者 |
小坂 肇 独立行政法人森林総合研究所, 九州支所, グループ長 (20343791)
梶村 恒 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (10283425)
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キーワード | 外来重要害虫 / ノクチリオキバチ / リスク管理 / 共生菌 / ミューカス |
研究概要 |
東アジアのマツ類に対するノクチリオキバチ共生菌の病原性とミューカスの毒性を明らかにするため、南アフリカのPinus radiata材から脱出したノクチリオキバチ50頭を用いて腹部を解剖し、共生菌の菌株とミューカスを分離した。その分離菌株のジェネットを識別するため、分離菌株間で対峙培養を行った。その結果、分離した50菌株はすべて同一のジェネットであった。一方、ノクチリオキバチとニトベキバチのミューカスについて成分分析を行った結果、タンパク質と炭水化物で構成されていること、タンパク質と炭水化物はニトベキバチに比べ、ノクチリオキバチが多いことを明らかにした。 東アジアに侵入した場合の分布域(危険地域)を推定するため、ニュージーランド、オーストラリア、ブラジル、アルゼンチン、チリ、米国、カナダでノクチリオキバチによる枯死被害の分布と対応する気象データを収集した。その他に、南アフリカでの被害分布や被害林での被害実態調査を行った結果、ノクチリオキバチによるマツ類の枯損についてその被害がダーバンからネルスプロートまで広がっていることを明らかにした。 キバチの在来天敵(線虫)の寄生性や寄生様式を明らかにするため、ノクチリオキバチと同属のニトベキバチ雌成虫を青森県田子町で採集し、解剖したところDeladenus属の寄生線虫を検出した。線虫に寄生されたキバチ雌成虫には卵がないものがあり、あっても10数個しかない上に卵巣小管が破壊されていて産卵は不可能と思われた。これらのことから、ニトベキバチに寄生する線虫は宿主雌成虫を不妊にしている可能性が高いことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
達成目標とした南アフリカのケープタウンでマツ類の枯損被害を起こしているノクチリオキバチ雌50頭から分離した共生菌Amylostereum areolatum50菌株を対峙培養した結果、分離菌株はすべて同一のジェネットであった。ノクチリオキバチによるマツ類の枯損についてその被害が南アフリカでダーバンからネルスプルートまで広がっていることを明らかにした。ノクチリオキバチと同属のニトベキバチ雌成虫を青森県田子町で採集し、解剖したところ、Deladenus属の寄生線虫を検出した。線虫に寄生されたキバチ雌成虫には卵がないものがあり、あっても10数個しかない上に卵巣小管が破壊されていて産卵は不可能と思われた。以上から、ニトベキバチに寄生するDeladenus属の線虫は宿主雌成虫を不妊にしている可能性が高いことを明らかにした。 以上の結果により、おおむね順調に進展していると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
南アフリカなどにおいてノクチリオキバチの共生菌とミューカスの分離を行い、マツ類に対する分離菌の病原性やミューカスの毒性を明らかにし、キバチ類から分離した共生菌に関して対峙培養や塩基配列分析などにより、集団構造や遺伝的多様度を解析し、各集団の特徴づけを行う。また、南アフリカなどでノクチリオキバチによる枯死被害の分布と対応する気象データを収集し、東アジアに侵入した場合の分布域(危険地域)の推定を行い、キバチ成虫から寄生線虫が発見された場合、寄生率、食餌菌範囲を調べるとともに、寄生の影響(不妊化率など)を調査する。一方、キバチの寄生蜂を調査し、データベースを作成するとともに、寄生性などを検討する。
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