研究概要 |
発展途上国での病気の早期発見や先進国での高齢者在宅医療を目的とする在宅健康診断の重要性とそれを支える新しい医療診断システム構築への期待が高まっている。本研究では、"紙"とインクジェット印刷を用いた低コストの健康診断チップの開発を目指した。紙は毛細管力による自発的な送液機能があり、デザインした枠を印刷することにより任意の流路が作製できる。 量産が可能となることと環境にやさしい材料の使用を念頭に置き、健康診断チップの作製方法を検討し5つの要素技術を組み合わせた。①高印刷適性をもつ高密度化診断用紙の調製。不純物の含量が極めて少ないコットンリンターパルプ(東洋濾紙)を叩解し(PFIミル)し、湿潤紙力増強剤ポリアミドエピクロルヒドリン(PAE)を添加し抄紙した。②導電性ポリマーインクを用いた電極作製。高導電性の環境に優しい水系ポリマーPEDOT:PSS(poly (3,4-ethylenedioxythiophene) poly (styrenesulfonate))(Agfa社OrgaconTM IJ-1005)のインクをインクジェットプリンタ(Dimatix DMP-2831, Fujifilm)用い、分析ゾーンに3本ずつの電極を印刷した。③紫外線硬化樹脂のインクを用いたマイクロ流路の作製。モノマーOctadecyl acrylate、オリゴマー 1,10-decanediol acrylate、光重合開始剤Irgacure 651を混合したインクを印刷後、365 nmの紫外線を600 mW/cm2の強度で30秒照射して硬化させた。④酵素固定電極を用いた電気化学分析システム、⑤以上5つの技術を用いた一連の工程をインクジェット"印刷"し、健康診断チップを試作した。
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