これまでに,マウスの肥満抑制効果に起因するサイプレス材精油を分画できたので,本年度はその各分を吸入することによる、脂質、糖、ホルモンおよび刺激精油成分の代謝過程をメタボロミクス解析により網羅的に行うとともに、交感神経活動の活動度と代謝産物の関係を調べ肥満抑制メカニズムの解明に関する以下の結果を得た。 1.精油の活性画分及を吸入したマウスの血清、肝臓、白色脂肪組織および褐色脂肪組織についてメタボロミクス解析を受託依頼し、代謝物質の産生過程や量的把握および代謝経路マップを解析したところ、匂い刺激によって脂質代謝成分が変化すると予想したが,大きな変化は観察されず,活性成分の肥満抑制作用機序をメタボローム解析からは明らかできなかった。 2.活性各分を麻酔下ラットに吸入した後、副腎支配迷走神経および肩胛骨周辺の褐色脂肪支配交感神経の活動度を神経生理学手法で計測し、神経活動の活性化が血清中のカテコールアミン類および脂肪組織の遊離脂肪酸の代謝に与える事を明らかにした。 3.活性画分中の成分を明らかにするため、サイプレス材精油をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画し、グアイオールを単離した。オイデスモールはサイプレス精油からの取得は困難であったので、生薬のソウジュツから単離した。これらの成分を麻酔下ラットに吸入し、交感神経活動と褐色脂肪組織の温度測定に供したところ、両成分ともに交感神経活動の活性化と温度上昇が認められた。よって、サイプレス材精油の肥満抑制原因成分としてグアイオールとオイデスモールであることが判明した。
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