研究課題/領域番号 |
22380095
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小松 幸平 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (20283674)
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研究分担者 |
森 拓郎 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (00335225)
北守 顕久 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (10551400)
荒木 康弘 独)建築研究所, 構造研究グループ, 研究員 (40435582)
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キーワード | 集成材 / ラーメン / 耐力壁 / ラグスクリューボルト / 添え板 / 摩擦接合 / 履歴グループ / 高靭性 |
研究概要 |
1)耐力壁との併用を前提とした戸建て木造住宅用ラーメン架構の開発 耐力壁とラーメン架構を併用した戸建て住宅の設計法を開発する目的で、木質ラーメンフレームと構造用合板を釘打ちした耐力壁が直列に配置された試験体について実験的検討を加えた。耐力壁としては長さ910mm×高さ2730mmの集成材枠に釘を50~150mmピッチに変化させて片面に構造用合板を留め付けた1P耐力壁を用いた。木質ラーメンとしては、、在来軸組金物工法住宅の分野で使われている梁受け金物や柱脚金物を組み合わせて門型ラーメンを構成させた住宅用のラーメン架構を用いた。耐力壁とラーメンを直列結合させた試験体の場合、ラーメン単体の水平剪断性能と耐力壁単体の水平勇断性能の単純な重ね併せの性能は発揮されず、両者の和よりも幾分低い性能が発揮された。力学モデルにおける直列バネシステムの場合、性能の低い方の剛性や強度にシステム全体の剛性や強度は左右されがちであることを、今回の実大実験で確認することができた。 2)多層木造を想定した高強度・高剛性・商靱性な1層部分のモーメント抵抗接合法の開発 高剛性、高靱性な集成材純ラーメン架構を開発する目的で、LSBの引き抜け耐力以下の荷重レベルで部材を連結しているコの字型金物を接合している摩擦接合用高張力ボルトを先行たり降伏させる特殊長孔ボルト接合法を開発し、その機能を組み込んだ集成材柱-梁接合部試験体、柱脚試験部試験体を用いて静的正負繰り返し加力実験を行い、接合部が予定通りLSBの引き抜け耐力以下の荷重レベルで明確な降伏点を示す弾塑性挙動を示すことを確認した。更に、同様の接合部で組み立てた実大門型ラーメン試験体の静的水平加力実験を行った。柱-梁接合部、並びに柱脚接合部単体の実験で得られた非線形モーメントー回転角の関係を負勾配を含む4折れ線関係で包絡線として近似し、更に谷・野村の提唱する"Normarized Characteristic Loop"(NCL)モデルで履歴ループを近似して、実大実験(スパン4-5m、高さ2.73m)の集成材門型ラーメン架構の非線形解析を行った結果、数値計算結果は実大集成材門型ラーメン架構の実際の、剛性、履歴ループの特徴、降伏耐力等を十分な精度で予測できることが分かった。この成果を基に、接合法の特許を申請した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究者たよって、これまでに、通しボルト式ラーメンの弱点である初期剛性の低さを画期的に向上させる方法の開発が進んだこと、並びに耐力壁と木質ラーメンを併用した構造システムの実験が順調に進み、予想通り単なる2つの性能の違う耐力要素の重ね併せは出来ないことが判明したこと、また研究主任は高靱性ラーメンを可能とする接合法の開発に成功し、静的加力実験の結果、非常に靱性に富んだ接合部を実現できることを実際に確認でき、特許申請を実現できたことによる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度においては、CO2の固定機能が高いと期待される「低層木造公共建築物」への適用を目指して、2層集成材構造建築物をモデル的に机上設計し、その荷重分担領域を再現できるような形で柱-梁接合部分を立体的に取り出した「柱勝ち2層接合試験体」を製作して、京都大学防災研究所の振動台を借用して実際の観測地震波を入力する振動実験を行い、静的実大実験で確認された高靭性が、実際の観測地震動クラスの揺れに対しても、同様に発現されるかどうかを確認する予定である。
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