本年度の報告は以下の通りである。 本研究は、高いエネルギー変換効率、安価、軽量、フレキシブル、持ち運びができるなど、無機薄膜太陽電池と比較し多くの利点を持つユビキタス有機薄膜太陽電池の創製に向けた基礎的研究である。特に、高いエネルギー変換効率の有機薄膜太陽電池の創製のキーは,理想的なpin接合を持つデバイスの構築にあるが、そのようなデバイスが創製された例は無い。 昨年度はセルロースナノファイバー(CNF)の特性(比表面積効果、超分子配列効果など)に着目し、p-型半導体官能基であるフタロシアニンをCNF表面に化学結合で担持させた、亜鉛フタロシアニン担持CNFを調製し、n-型半導体としてフラーレン誘導体(PCBM)を用い光電変換デバイスを作成した。その結果、低いエネルギー変換効率(PCE 0.001%)ではあるが最初のCNF系光電変換でバイスの作成に成功した。 これらの結果を踏まえ本件度は、デバイス作成に際し分散性の向上が期待されるp-型半導体ポリチオフェン担持CNFを調製した。すなわち、まず、チオフェン担持CNFを調製し、炭素鎖の異なる3-アルキルチオフェンの共存下で重合させポリチオフェン担持CNFを調製した。次いで、PCBMを用い光電変換デバイスを作成した。その結果PCEは25倍(0025%)向上した。すなわち、CNF誘導体の分散性の向上がPCEの向上に密接に反映されることが判明した。これらの結果は、今後の高PCEデバイス作成に重要なヒントを呈示するものと考える。
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