研究課題/領域番号 |
22380099
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
大村 和香子 独立行政法人森林総合研究所, 木材改質研究領域, 主任研究員 (00343806)
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研究分担者 |
木口 実 独立行政法人森林総合研究所, 木材改質研究領域, 室長 (50353660)
片岡 厚 独立行政法人森林総合研究所, 木材改質研究領域, チーム長 (80353639)
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キーワード | シロアリ / 視覚特性 / 走光性 / 階級 / 複眼 |
研究概要 |
本研究の目的はシロアリの各階級において、誘引・忌避を効果的に生じる波長および照度を明らかにするとともに、各階級の光受容サイトを複眼の発達と併せて確認し、シロアリの視覚特性を解明することである。 今年度は大型のネバダオオシロアリを用いて、視覚受容サイトと考えられる複眼に対して、各波長に分光した光を照射したときの網膜電位を測定し、その視覚特性を検討した。その結果、行動実験においては、光量子束密度60μmol/m^2/s一定時では波長450nm以下で、全ての個体が照射直後~5秒以内に進行方向を変え、アクリルパイプ内で逆行するもしくはそのまま後退するという反応を確認した。また特に紫外域において照射直後に驚愕反応を示し、そのまま後退する個体が多かった。一方、複眼の分光感度に関しては、520nm(緑)と360nm(紫外)にピークが存在した。また波長650nm(赤)に対しては、ほとんど感度がなかった。他昆虫では一般に分光感度が高い波長において、明瞭な忌避行動や誘引行動を示すことが知られる。しかしネバダオオシロアリでは、波長650nm(赤)および360nm(紫外)における走光性と複眼の分光感度との相関は明瞭に認められたが、520nm(緑)では高い分光感度を示すにもかかわらず、特異的な忌避・誘引行動が認められなかった。次年度は、有翅虫でも擬職蟻と同様に520nm(緑)で高い分光感度を示すか、有翅虫の複眼における網膜電位測定を行い視覚特性を確認するとともに、当該波長における特異的な行動の有無等について実験する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究の目的」において研究期間内に達成を想定した(1)シロアリの階級別の光に対する走性、行動の波長および光量依存性に関しては、職蟻と兵蟻の違いについて検証後、原著論文として発表している。また(2)シロアリの「複眼」の分光感度の神経生理学的手法による測定に関しても、本年度、(擬)職蟻において測定し、結果については学会発表を行っている。以上のことから、本研究は当初の計画に沿って順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度には、複数のシロアリ種において有翅虫の走光性を検討するとともに、有翅虫における「複眼」の分光感度の神経生理学的手法による測定を実施する。さらに、シロアリ被害家屋において有翅虫が嗜好する特定波長光を用いたトラップ実験を実施する予定である。
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