研究概要 |
近年、クロマグロ養殖において,住血吸虫の寄生による被害が深刻になっていて、一部に未承認薬が駆虫剤として用いられている実態があり、食の安全上の問題となっている。そこで、クロマグロの安全かつ安定的な養殖生産に資することを目的として、本症を防除するための基礎研究を行った。 平成24年度には以下の実験を行った。1)駆虫実験:最低有効量決定するために,プラジクアンテル(PZQ)15,7.5,3.25,0mg/kgを3日間経口投与した結果,7.5mg/kg以上の用量でC. opisthorchisの完全駆虫が確認された。魚体内におけるPZQの動態を調べるため,15mg/kgをクロマグロに経口投与し,経時的に採材し,肝臓,腎臓,筋肉,血清中のPZQ濃度をHPLCにより測定した。その結果,血清中で90分後に最大値の2.0μgとなった。いずれの臓器においても投与10時間後までに急激に減少し,24時間後には検出限界(0.02μg)以下となった。2)PZQのin vitroにおける効果:C.opisthorchisでは0.2ppm・24時間処理で明瞭な影響が観察された。24~72時間暴露した虫体を薬剤無添加の培地に移したところ、0.5ppm・72時間処理で、薬剤の影響から回復しなかった。SEM観察では,24時間後でもPZQ無添加対照区では病的変化はなく,虫体外被は微細な畝状構造が規則正しく配列し、体表面には乳頭状の突起が観察された。0.2ppmの6.5時間処理では著変は認められなかったが,13時間後では体表の膨隆と収縮,および体表に雛形成が顕著となった。こうした病変は1ppmでは6.5時間後にすでに明瞭であった。C. orientalisの0.2ppmの6.5時間処理では体の収縮はさほど顕著ではなかったが,体表面に小穴の形成が特徴的であった。1ppmの6.5時間では,体表面の小穴以外に体表に皺の形成が認められ,16.5時間後にはさらに体表の膨隆と収縮も確認された。また,低濃度区での小穴の形成は軽微な個体が多かったが,病変は時間経過とともにより顕著に表れる傾向があった。
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