パーキンサス属原虫が天然海域のアサリ資源に与える影響、ならびにパーキンサス属原虫寄生強度と環境の影響を明らかにすることを目的として、以下の4点について研究を実施した。 (1) アサリに寄生するパーキンサス2種のリアルタイルPCRによる定量法の開発:Perkinsus olseniとP.honshuensi2種の増幅のために設計したプライマーの特異性ならびにアサリからのDNA抽出法を検討した。その結果、アサリ組織にパーキンサスそれぞれの種の培養栄養体を添加したものを標準試料とし、アサリからChelex樹脂をもちいて抽出したDNAをテンプレートとして、それぞれの種に対する定量法を開発することができた。 (2) 定点調査によるアサリのパーキンサス感染状況の把握:アサリ資源の減耗が顕著な有明海の一地点に定点を置き、アサリ生息数のつぼ狩り調査とパーキンサスの感染状況を調査した。その結果、パーキンサス寄生強度は106細胞/g軟体部湿重量に達し、夏季にアサリの著しい減耗が起きることが明らかとなった。 (3) 各地域のアサリにおけるパーキンサス感染状況調査:浜名湖、有明海、東京湾、三河湾などの様々な環境に生育するアサリにおけるパーキンサス原虫の寄生状況を種別に調べたところ、P.honshuensisの感染強度は検出限界以下であり、パーキンサスの感染強度は比較的塩分の低い海域では感染強度が低い傾向があった。 (4) パーキンサス培養株からの遊走子作出法の開発:Perkinsus broth mediumで培養した栄養体をAFTM培地で培養した後、再びPerkinsus broth mediumに戻すという手法で遊走子を作出することができた。ただし、遊走子遊出率はP.olseniでは30-40%に達するのに対し、P.honshuensisでは5%以下と低く、今後さらに改良する必要がある。
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