研究課題/領域番号 |
22380106
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
良永 知義 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (20345185)
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キーワード | アサリ / パーキンサス / 原虫 / 資源 / 病害 |
研究概要 |
(1)攻撃試験の効率化を目的として、Perkinsus olseni遊走子の作出方法の最適化を図った。その結果、培養した栄養体を注射したアサリの外套膜と鯛からトリプシン処理によって前遊走子を集める手法を開発した。(2)P.olseniのアサリへの病害性を、異なるサイズのアサリ稚貝(殻長3-4mm)と幼貝(殻長10mm前後)を用いて、かつ水温を変えて調べた。その結果、どの条件でも感染によってアサリが死亡するが、病害性は高温ほど強く、また、小型の個体ほど高いということが分かった。また、アサリが死亡する感染強度は野生アサリにおいて最も高い感染強度とほぼ同等であったことから、パーキンサス原虫の感染は野生アサリの重要な減耗要因になっていると推察された.(3)22年度と同様に、アサリ資源の減耗が顕著な有明海の一地点にでアサリ生息数のつぼ狩り調査とパーキンサスの感染状況を調査した。その結果、パーキンサス寄生強度は106細胞/g軟体部湿重量に達し、新規加入群では夏季にアサリの著しい減耗が起きること、前年加入群では4月頃から減耗が始まり夏季まで継続することが明らかになった。(2)の結果と合わせ、パーキンサス原虫の感染は野生アサリの重要な減耗要因になっていると結論することができた。(4)未感染アサリの放流試験:、(3)の定点調査時に未感染アサリをかごに入れて放流し、一ヵ月後に回収して、寄生強度を調査した。その結果は、アサリへのパーキンサス原虫の侵入は厳冬期の除いてほぼ通年生じていることが明らかになった。(5)異なる環境における感染状況調査:比較的狭い海域で塩分濃度が異なり、かつ天然アサリ幼貝が広く分布している浜名湖において各地点における天然アサリにおける感染強度をRFTM培地でしらべた。その結果、浜名湖内でも場所によって感染強度が大きく異なることが分かった。しかし、それぞれの地点の塩分濃度の変化が不明で、詳細な解析ができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
攻撃試験とフィールド調査により、パーキンサス原虫がアサリの重要な減耗要因になっていることを示すことができた。また、P.honshuensisはP.olseniに比べて著しく感染強度が低く、減耗要因としてはほぼ無視できることから、今後の減耗要因の研究はP.olseniに集中できることもわかり、今後の研究の労力の軽減にもつながった。
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今後の研究の推進方策 |
パーキンサス原虫がアサリの重要な減耗要因になっていることを示すことができた。今後は、アサリ増殖場の改良を目的としてパーキンサス原虫が感染しにくあるいは感染しても影響が少ない環境要因を明らかにすることが重要である。これまでの調査では、塩分濃度が重要なファクターになっていることが推察されることから、塩分濃度が増殖に及ぼす影響を攻撃試験とフィールド調査で明らかにしていく。
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