研究課題
本研究では、遺伝的性決定機構および温度依存的性決定機構を併せ持つ南米原産のパタゴニアペヘレイOdontesthes hatcheriには、抗ミュラー管ホルモン(Anti-Müllerian hormone; amh)遺伝子の雄特異的な重複遺伝子(amhy)が存在することが判明した。さらにその転写産物が性分化時期に特異的に発現すること、本遺伝子の翻訳阻害により雄性分化が阻害され雌性分化が促進されることを発見し、amhyが本種の精巣決定遺伝子であることを実証した。一方、性決定機構が極めて強い温度依存性を示す近縁種のペヘレイOdontesthes bonariensisでは、高温が誘起する雄性分化時に、ストレスホルモンであるコルチゾルと雄性ホルモンである11-ケトテストステロン(11-KT)が上昇することを明らかにした。また、外因性コルチゾルを孵化稚魚に投与したところ、高温刺激なしでも11-KTの代謝酵素遺伝子である11-β水酸基脱水素酵素(hsd11b2)mRNA量および11-KT量が上昇することが明らかとなった。従って、本種では、高温によるコルチゾル量増加によりhsd11b2 mRNA量の上昇が誘起され、結果として11-KT量が増加し雄化が引き起こされると考えられた。さらに、ペヘレイにおいてもamhyホモログの単離に成功し、成魚を用いて本遺伝子と表現型性の関連を調査したところ、amhyは雄の表現型性と強くリンクしていることが明らかとなった。amhyを保持する孵化稚魚を性的に中立な水温で飼育したところ、amhy mRNAは性決定/性分化時期の生殖腺において安定的に発現し、これらの個体は100%雄へと分化したことから、本遺伝子は性決定機構が極めて強い温度依存性を示すペヘレイにおいても雄性分化に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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General and Comparative Endocrinology
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Endocrinology
巻: 153 ページ: 6003-6011
doi: 10.1210/en.2012-1517