研究課題/領域番号 |
22380111
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中尾 実樹 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (50212080)
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研究分担者 |
杣本 智軌 九州大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (40403993)
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キーワード | 補体 / 制御因子 / コイ / ギンブナ / 免疫 / 相互作用 / モノクローナル抗体 / 組換えタンパク質 |
研究概要 |
本研究は、自然免疫の第一線で働く補体系活性化の促進あるいは抑制による獲得免疫応答の制御機構を解明し、優れた生体防御能と免疫記憶を魚類に賦与できるように、免疫応答の補体活性化制御による最適化を目指した。本年度は、これまでに単離・同定あるいはクローニングしたコイとギンブナ補体成分C3および補体制御因子Tecremについて、それらの相互作用を解析することを目的とした。まず、TecremのC3に対する作用を、組換えTecrem発現CHO細胞に対するコイC3の沈着を、コイC3に対するモノクローナル抗体を用いたフローサイトメトリーによって解析した。その結果、Tecrem発現細胞は、非発現細胞と比べて有為に、コイC3の沈着量が低いことが判明した。このC3沈着阻害作用は、先の実験で認めたTecrem発現細胞の補体による細胞障害反応に対する高い抵抗性を説明できるメカニズムとして注目される。さらにTecremの機能を解析するために、本年はコイTecremのSCR1~4ドメインから構成される可溶性組換えタンパク質の作出と、Tecremに対するモノクローナル抗体(MAb)の樹立を進めた。可溶性Tecremについてはバキュロウイルス・昆虫細胞による発現系の構築に成功し、現在はその精製にこぎつけている。一方、抗Tecrem MAbについては、Tecrem発現CHO細胞に強い反応性を示す抗体のスクリーニングを終えたところである。また、これらのMAbにはギンブナTecremへの交差反応も期待でき、コイとギンブナにおけるTecrem発現リンパ球サブセットの同定およびリンパ球の機能解析に必要なツールとしてMAbを活用する準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ギンブナでの解析はコイと比較して進捗が遅いが、組換えTecremの発現やモノクローナル抗体の樹立が進んたので、今年度の成果としては概ね順調であり、来年度の研究に必要なツールが揃ったと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
可溶性の組換えTecremタンパク質および抗コイTecremモノクローナル抗体をツールとして最大限に活用し、Tecremの機能を、タンパク質・細胞レベルで解析していく。特に、混合リンパ球反応などの獲得免疫応答におけるTecremの応答調節作用を詳細に解析できると期待される。
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