研究課題
ヒラメを研究対象魚種として、免疫応答の初期制御を担うケモカインの白血球調節機能(細胞走化性誘導および細胞分化誘導)について研究を進めてきた。ケモカインによる細胞分化の誘導については、白血球長期培養技術および孵化仔魚へのマイクロインジェクション技術により検討したが、顕著な作用は認められなかった。一方、細胞走化性の誘導については、IL-8(好中球の走化性誘導)およびCXCL13(B細胞の走化性誘導)について明らかにした。IL-8の機能領域に関する研究では、N末端領域を削除した組換えIL-8に対する好中球の走化性を調べ、N末6-8残基(ロイシン-グリシン-バリン配列)が機能調節に関与することを示唆した。さらに、IL-8 N末領域に対するウサギポリクローナル抗体を作製し、本抗体によるIL-8の機能阻害に成功した。また、IL-8に対するモノクローナル抗体も複数クローン作製し、ヒラメIL-8タンパクを定量するサンドイッチELISA法を確立した。ヒラメ病原体(Edwardsiella tardaおよびNocardia seriolae)で感作された白血球はIL-8を産生・分泌することを確認し、その産生動態は病原体により異なることを明らかにした。本結果は、各感染症で生じる炎症反応の違いと関連している可能性があり、興味深い知見となった。IL-8およびCXCL13により活性化された好中球およびB細胞の発現遺伝子について調べた結果、好中球はIL-8遺伝子を、B細胞はCXCL13遺伝子をそれぞれ発現することが分かった。このことから、各ケモカインにより遊走誘導された各細胞は、同種の細胞をさらに誘導する働きを持つことが推測された。本研究は、免疫応答の初期制御機構におけるIL-8およびCXCL13の役割を提示すると共に、生体内の解析に不可欠な機能阻害およびケモカイン検出技術を生み出した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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