マナマコの生体外卵成熟誘起法の確立を目的として、16-20℃の異なる温度条件下でマナマコ卵巣をクビフリンとともに培養したときの、卵成熟、減数分裂の進行過程を明らかにした。18℃では核膜消失は培養開始後約45分、第一極体放出は80-90分、第二次極体放出は150-160分で起こった。温度に依存してこれらの進行速度は変化した。またほとんどの卵生生物と異なり、マナマコ卵は卵成熟過程において減数分裂を再停止しないことが判明した。次いで卵成熟後30分と卵成熟後3時間経過した卵を用いて受精し、第一卵割まで細胞学的な変化を追跡した。30分後受精群では、受精後90分で卵核、精子核の融合、150分で核分裂、180分で細胞分裂が観察された。3時間後受精群では、それぞれ受精後60分、120分、150分に観察された。 マナマコ精子の凍結保存条件の良否を判定するための手法と凍結保存用溶液の組成について検討を行った。まず、ナマコ精子の運動活性化条件とその測定条件について検討し、アルブミンに精子活性化作用のあることを明らかにし、このアルブミンを加えた人工海水(ASW)で精子を希釈すると、新鮮精子では希釈10分後に、凍結解凍精子では1分後に運動活性がピークになることが明らかとなった。次に画像解析装置でナマコ精子の運動を正確に自動測定するための種々の条件(運動精子と非運動精子の判定基準、運動速度や運動直線率を測定するためのフレーム数等)を明らかにした。また、ナマコ精子を凍結保存する際の希釈溶液として、20%ジメチルスルフォキシド+18%ウシ胎児血清+64%ASWが適していることが明らかとなった。
|